本研究の目的は、運動療法が前頭側頭型認知症(frontotemporal dementia: FTD)の行動異常に及ぼす効果とその機序を明らかにし、FTDに対する新たな治療法および支援策を構築することである。本目的を達成するために以下の3つの研究課題を設定した。課題1:介入内容決定のための予備検討、課題2:FTDに対する運動療法の効果①、課題3:FTDに対する運動療法の効果②。 COVID-19感染拡大の状況で、新たな対象者のリクルートが難しかったため、本年度は課題3について、これまで得たデータの解析を中心に研究を遂行した。対象は、FTDの診断基準に合致する男性5名(61-77歳)、および健常群の女性4名(61-77歳)である。評価項目は、認知機能、身体機能、心理機能、社会機能、および近赤外分光分析法(functional near-infrared spectroscopy: fNIRS)測定であり、それぞれ運動介入前後の変化について解析を行った。fNIRSは、専門家との連携のもと標準的な解析だけでなく、新たな手法を用いて多角的な方法でアプローチを行った。 また、これらから得られた成果を統合して、運動療法がFTDの行動異常に及ぼす効果とその機序について、現在論文執筆中である。 FTD に対する非薬物療法はほぼ皆無であり、本研究の目的が達成され、FTD に対する運動療法の有効性が証明されれば、非薬物療法の第一の手段として大きな役割を果たすことができる。本研究はFTD に対する新たな治療戦略に資する、社会的意義のある研究と考える。
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