研究実績の概要 |
前年度の結果をもとに、NASHの発症に連動してクッパー細胞上で発現亢進すると推定されるガラクトース/N-アセチルガラクトサミン含有糖鎖の検出を試みた。クッパー細胞の全タンパク質試料を用いたレクチンブロットを実施したが、ガラクトース特異的レクチン、N-アセチルガラクトサミン特異的レクチンを用いた場合のいずれにおいても、対照群、NASH誘発群の間で検出パターンに明確な差は認められず、異なるアプローチの必要性が示唆された。 このほか、タンパク質糖鎖修飾変動の生化学的基盤を把握することを目的とし、次世代シーケンサーによるRNA-Seq解析を実施した。対照群、NASH誘発群の比較発現解析から、発現変動遺伝子としてβ1,3-N-acetylglucosaminyltransferase 5(B3gnt5)、およびβ-galactoside α-2,6-sialyltransferase 1(St6gal1)を見いだすことができた。対照群と比較して、NASH誘発群のクッパー細胞ではB3gnt5遺伝子の発現が亢進していたことから、炎症病態の進展に応じてO-結合型糖鎖の伸長が促進されることが示唆された。一方で、St6gal1遺伝子は発現活性が低下しており、N-結合型糖鎖における末端シアル酸残基の修飾が抑制されることが示唆された。 以上より、前年度に推定した糖鎖の変動パターンを支持する結果が得られた。特に、NASH発症に伴うSt6gal1遺伝子の発現低下はガラクトース/N-アセチルガラクトサミン残基を末端に有する糖タンパク質糖鎖の増加に寄与すると考えられる。
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