研究課題/領域番号 |
17K13227
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研究機関 | 高崎健康福祉大学 |
研究代表者 |
三反崎 聖 高崎健康福祉大学, 薬学部, 助教 (10453424)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | estrogen / iNOS / GLUT4 / ovx |
研究実績の概要 |
エストロゲンによる血糖値上昇抑制メカニズムにおけるiNOSの役割を明らかにすることを目標として、本年度は以下の内容の研究を実施した。 1. エストロゲン欠乏モデルマウスにおけるiNOS発現の変化;卵巣摘出(ovx)マウスを用いた以前の解析から、我々はiNOSKOマウスにおいて野生型マウスと比較して血糖値上昇が抑制されていることを確認している。そこで、野生型マウスの肝臓から抽出したmRNA解析により、ovxマウスにおいて偽手術(sham)マウスに比較してiNOS遺伝子発現が増加していることを確認した。 2. 筋肉細胞におけるGLUT4発現量と膜移行性;同時に、骨格筋細胞の糖取り込みにおいて重要な働きをもつGLUT4遺伝子発現について検討した。その結果、酸素代謝型の筋肉であるヒラメ筋におけるGLUT4遺伝子発現は、ovxマウスではshamマウスに比較して低下していた。一方、免疫染色による筋肉細胞膜に局在するGLUT4発現の検討結果では、iNOSKO ovxマウスで、野生型ovxマウスと比較して増加していることが明らかになった。加えてiNOSKOマウスにおいてインスリンシグナルを担うIRS-1およびGSK-3βの発現の増加が観察されたことから、iNOS欠損により、インスリン感受性が向上することが示唆された。 3. 筋肉および肝臓におけるシグナル分子の変化;エストロゲンの作用はPI3-kinase/Akt/NF-κB経路およびAMPK活性化を介していると予測されるため、筋肉および肝臓における関連因子のタンパク質発現量を測定した。しかしながら、現段階ではovxマウスおよびiNOSKOマウスにおいてエストロゲンシグナル経路の因子発現に重大な差異は認められていない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、インスリン抵抗性に対するエストロゲンの作用とiNOS発現への関与ついて解析する計画であった。ovxマウスにおいてiNOS発現の上昇が確認された。また、iNOSKOマウスでは野生型に比較してインスリンシグナル因子のIRS-1やGSK3βの上昇あるいはGLUT4膜移行の増加が観察された。一方、iNOSがGLUT4の発現および膜移行にどのようなシグナルで関与するかを明らかにするまでに至らなかったため、計画書に記載した、変化が観察された因子についてその阻害薬を用いての効果の確認を行うことができなかった。 また、同じく計画書に記載したエストロゲンタブレットによるエスロトゲン補充による血糖値上昇抑制の効果の検討は、研究費の節約の観点からも、iNOSが関与する重要なシグナルが判明してから行なうこととした。 以上の観点から、本年度の研究の達成度はおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、以下の計画で研究を実施する。 1. 膵臓ランゲルハンス島細胞におけるiNOSの働きとインスリン分泌の検討;iNOSは膵臓ランゲルハンス島においてインスリン分泌に関与していることが知られているため、ovxマウスおよびiNOSKOマウスにおいては分泌機能に影響を及ぼすことが考えられる。そこで、平成31年度計画にあるovxマウスから単離精製したランゲルハンス島培養細胞におけるiNOS発現およびインスリン分泌の検討を前倒しして実施する。 2. 運動によるiNOS発現の変化と血糖値への影響;当初の計画通り、運動負荷時におけるインスリン抵抗性およびiNOS発現の変化の検討する予定である。Ovxマウスに対し適度な運動負荷を行ない、iNOS発現の低下や血糖値降下作用について解析を行なう。 3. GLUT4膜移行におけるiNOSの関与の検討;ovxマウスにおいてGLUT4遺伝子発現およびGLUT4膜移行が低下していること、またiNOSKO ovxマウスにおいては膜移行が増加していることから、iNOSのGLUT4膜移行に対する関与を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究計画では、今年度の予算は、消耗品購入および旅費、論文投稿料に充てる予定であったが、本研究成果の論文投稿は行わなかったため、次年度の繰り越し金が発生した。平成30年度は、単離精製したランゲルハンス島培養細胞における研究遂行のための消耗品に研究費を主に使用する。また、運動による血糖降下作用の検討を行なうため、回転用ケージを購入する予定である。
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