研究実績の概要 |
昨年度の研究では、アトピー性皮膚炎(AD)患者を対象として、日常生活における身体活動量が皮膚バリア機能およびAD病態関連因子に及ぼす影響について検討を行った。対象者はAD患者19名(平均年齢:28.4±5.6歳, 男性2名, 女性17名)とした。AD病態関連因子として血中のthymus and actication-regulated chemokine(TARC)、好酸球数、IgE、自己回答式の病態調査としてPatient-Oriented Severity Scoring of Atopic Dermatitis(PO-SCORAD)、皮膚バリア機能として角質水分量、経皮水分蒸散量(transepidermal water loss; TEWL)、皮膚pH、安静時発汗量を測定した。身体活動量は、生活習慣記録機ライフコーダGS(スズケン)を2週間着用して測定した。その結果、血中のIgE値と角質水分量(r = -0.464, p < 0.05)、TARC値と安静時発汗量(r = 0.486, p < 0.05)、皮膚pHと好酸球数(r = 0.592, p < 0.01)、皮膚pHと総消費量(r = 0.581, p < 0.05)、PO-SCORADのスコアと運動強度5の身体活動量(r = -0.524, p < 0.05)において、有意な相関関係が認められた。以上の結果から、AD患者においては、血中IgE値が高いほど、皮膚の物理的バリア機能が低下しており、中強度の身体活動量が多い人ほどAD症状が軽症であることが明らかとなった。今年度は、AD患者の身体活動量とAD病態関連因子との関連性についてはさらに対象者を増やして詳細に検討し、継続的な運動介入によるAD病態への影響についても研究を行っていく予定である。
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