研究課題/領域番号 |
17K13232
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研究機関 | 独立行政法人日本スポーツ振興センター国立スポーツ科学センター |
研究代表者 |
枝 伸彦 独立行政法人日本スポーツ振興センター国立スポーツ科学センター, スポーツ研究部, 契約研究員 (50711181)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | アトピー性皮膚炎 / 身体活動量 / 運動 / 皮膚バリア機能 / TARC / IgE / SCORAD |
研究実績の概要 |
令和2年度の研究では、アトピー性皮膚炎(AD)と診断された患者を対象に、血中のthymus and actication-regulated chemokine(TARC)を基準として、TARC低値群とTARC高値群における日常生活の身体活動量、AD病態関連因子、皮膚バリア機能の関係を検討した。対象となるAD患者をTARC低値群15名(LT群; TARC<450)、TARC高値群13名(HT群; TARC≧450)に群分けした。AD病態関連因子として好酸球数およびIgE、Patient-Oriented Severity Scoring of Atopic Dermatitis(PO-SCORAD)、角質水分量、経皮水分蒸散量、皮膚pHを測定した。身体活動量については、生活習慣記録機を2週間着用して測定した。その結果、LT群に比べてHT群で皮膚pH、総消費量、Exが有意に高値を示した(p<0.05)。また、HT群におけるAD病態関連因子と身体活動量の相関関係を解析した結果、PO-SCORADと運動量(r=0.598)、強度7の身体活動量(r=0.627)が有意な正の相関関係を示した(p<0.05)。以上の結果から、AD患者においては、身体活動量が高いほどAD病態関連因子が高く、特に高強度の身体活動量は重症度と関連することが推察された。しかしながら、本検討では、男性による身体活動量の高さに偏りがあったため、女性21名のみで相関関係を解析した結果では、TARCと強度5の身体活動量が有意な負の相関関係を示すことが明らかになった(r=-0.455, p<0.05)。従って、適度な強度での身体活動はAD病態関連因子を低下させる可能性がある。次年度においては、本研究結果をもとに運動強度を適切に設定し、継続的な運動によるAD病態関連因子への影響について研究を行っていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
令和2年度は、新型コロナウイルス感染症の流行によって、予定していた運動介入試験を実施することができなかったため、これまでに測定したデータを改めて精査し、身体活動量とAD病態関連因子の関連について、TARC値を基準として男女別により詳細な解析を行った。今回の解析結果をもとに、次年度の運動介入試験の実施に向けて、準備を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
皮膚バリア機能やAD病態関連因子に対する継続的な運動の影響について明らかにするために、12週間の縦断的な運動介入を実施する。ただし、これまでの研究結果で運動強度と病態の関連性が示唆されていることから、皮膚科医と協議しながら適切な運動強度と頻度を決定する。また、測定時や運動介入時の新型コロナウイルス感染症対策もしっかりと準備して研究を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度に実施予定だった運動介入試験が、新型コロナウイルス感染症の流行によって実施が困難となったため、次年度使用額が発生した。発生した費用については、次年度の運動介入試験の実施に向けて、アトピー性皮膚炎と診断された患者のリクルートメント費用ならびに検体の解析費用として使用する予定である。
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