研究実績の概要 |
令和3年度の研究では、アトピー性皮膚炎(AD)と診断された患者28名から採取した血清を用いてIL-4およびIL-13の解析を新たに実施した。その結果、IL-4はほとんどのサンプルで検出下限を下回っていたが、IL-13は12サンプルの濃度を解析することができ、高強度の日常身体活動(r=-0.513, p<0.01)および経皮水分蒸散量(TEWL: r=0.394, p<0.05)と有意な相関関係を示した。IL-13は、皮膚の物理的バリア障害に関与しているが、高強度の日常身体活動が高いほどIL-13が低値を示しており、日常身体活動が皮膚の物理的バリアに影響する可能性が考えられた。しかしながら、IL-4とIL-13は検出下限を下回るサンプルが多かったため、より感度の高いELISAキットを使用して再解析する必要がある。また、令和3年度は、AD患者28名の測定データをもとに、Patient-Oriented Severity Scoring of Atopic Dermatitis(PO-SCORAD)のスコアが25以上50未満の中等度症状の患者16名を抽出し、日常生活の身体活動量、AD病態関連因子、皮膚バリア機能の関係を検討した。AD病態関連因子として好酸球数、IgE、角質水分量、TEWL、皮膚pHを測定した。身体活動量については、生活習慣記録機(Lifecorder GS, スズケン)を2週間着用して測定した。その結果、運動量と角質水分量(r=0.611, p<0.05)、歩数とIgE(r=-0.635, p<0.01)、歩数と好酸球数(r=-0.610, p<0.05)において有意な相関関係が示された。以上の結果から、中等度症状のAD患者においては、身体活動量が高いほど皮膚の物理的バリアが高く、血中のAD病態関連因子が低くなることが推察された。
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