本研究は、高齢期の認知機能低下を予測可能なパフォーマンステスト(S-TMT)を開発し、その信頼性と妥当性を検証することを目的としている。S-TMTの信頼性と構成概念妥当性について解析した結果、S-TMTの級内相関係数は0.82で、運動機能として歩行速度、認知機能として情報処理、注意機能、遂行機能がそれぞれ独立して有意に関連しており、S-TMTが運動機能として移動性、認知機能として視覚依存実行機能を同時に評価する信頼性の高い運動・認知二重課題テストであることが明らかとなった。これらの結果をまとめ、査読付き国際誌Geriatrics & Gerontology Internationalに投稿し、受理された(DOI: 10.1111/ggi.13878)。S-TMTの併存的妥当性は、S-TMTがMMSEと中程度の相関(長いS-TMTの所要時間は、MMSEの低い得点と関連する)を示し、S-TMT評価が運動機能単独または認知機能単独評価よりも、軽度認知障害や認知障害を判別する能力が高いことが明らかとなった。予測妥当性についても、長いS-TMTの所要時間は認知機能低下の高いリスクと関連し、S-TMTによる評価は運動機能単独または認知機能単独評価と比較して、認知機能の低下を強く予測することが明らかとなった。現在、これらの結果をまとめ、国際誌に投稿中である。
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