研究課題
本研究では、非肥満者における高LDLコレステロール血症の予防改善に向けた、遺伝素因を考慮した運動・栄養処方および保健指導提案のためのエビデンス蓄積を目指し、1)非肥満者と肥満者それぞれにおける、高LDLコレステロール血症の発症に及ぼす遺伝素因の影響の強さを明らかにすること、2)非肥満者と肥満者それぞれにおいて、遺伝素因に関わらず、高LDLコレステロール血症の発症リスクを低下させる生活習慣要因および身体特性を明らかにすることを目的とする。平成29年度は、LDLコレステロールの遺伝的リスクスコア(LDL-genetic risk score[LDL-GRS])を構築し、非肥満者と肥満者において、LDLコレステロール濃度に及ぼすLDL-GRSの影響が異なるかどうかを検討した。また、非肥満者と肥満者の両方において、BMIの増加はLDLコレステロール濃度の増加に関連するかどうかを検討した。中高齢男女812名を対象とした横断研究を実施した。日本人を対象としたゲノムワイド関連において、LDLコレステロールと強く関連することが報告されている一塩基多型(SNP)の中から6個を選択して分析し、各SNPのeffect size(β)で重み付けしたリスクアレルの保有数を合計してLDL-GRSを求めた。LDL-GRSとLDLコレステロール濃度との間に強い正の関連が認められ、その関連の強さはBMIが25未満の非肥満者と、25以上の肥満者において同定度であった。一方、非肥満者においてはBMIとLDLコレステロール濃度との間に有意な正の関連が認められたが、肥満者においては関連が認められなかった。さらに、標準体重であるBMI=22を用いて、非肥満者を2群に分類した場合、BMIが22未満の群においてはBMIとLDLコレステロール濃度は有意に関連したが、BMIが22以上の群において有意な関連は認められなかった。
2: おおむね順調に進展している
LDLコレステロール濃度に関連する主要なSNPの分析が完了し、それらを用いて構築したLDL-GRSがLDLコレステロール濃度に及ぼす影響の強さは、肥満者と非肥満者で同程度であることを明らかにすることができたため。また、非肥満者におけるLDLコレステロール濃度の独立した予測因子としてBMIを同定し、その関連は特にBMIが低い場合においてのみ認められる可能性が示唆されたため。
データの信頼性を高めるためにサンプルサイズをさらに増やすとともに、本年度に構築したLDL-GRSの精度をさらに高めるために、5~10個のSNPを追加で分析し、LDL-GRSを再構築する。再構築したLDL-GRSを用いた場合にも、本年度と同様の知見が得られるかどうかを確認する。横断・縦断データを用いて、LDLコレステロール濃度に対するLDL-GRSと生活習慣要因・身体特性の相互作用の解析を進め、非肥満者と肥満者それぞれにおいて、遺伝素因に関わらず、高LDLコレステロール血症の発症リスクを低下させる要因を明らかにする。
LDLコレステロール濃度に関連するSNPを追加して分析するため、SNP解析に必要な試薬・消耗品の購入に充てる予定である。
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