研究課題/領域番号 |
17K13246
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
幸 篤武 高知大学, 教育研究部人文社会科学系教育学部門, 講師 (00623224)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 体力 / 運動器健診 / 住環境 |
研究実績の概要 |
本年度は申請者の所属機関の附属幼稚園児のデータを用い、①運動器健診結果と体力との関連について、また②居住環境と体力との関連について横断的な検討を行った。 ①では、解析に必要な変数に欠損の無かった106名を対象に、体力測定結果を目的変数に、運動異常所見の有無を説明変数、月齢を調整変数として用いた一般線形モデルにて解析を行った。その結果、握力、ソフトボール投げ、立ち幅跳び、25m走の結果と運動器異常との間に横断的関連は認められいことが明らかとなった。この結果より、運動器異常所見の有無と体力との間に関連性は無い可能性が示唆された。②では、体力及び居住環境や解析に必要な全ての変数に欠損のなかった59名を対象として、目的変数に体力、説明変数に居住環境のそれぞれを、また調整変数に「性」、「月齢」、「運動系の習い事の有無」、「普段の身体を動かす様子」を投入した一般線形モデルを用いた。握力と近所の運動場所との間に関連が認められ、非良好群と比較して良好群の方が成績は良かった。またソフトボール投げと近所のバス停・駅との間に、関連が認められ、非良好群と比較して良好群の方が成績は良かった。一方、立ち幅跳びと25m走と近所の治安との間に関連が認められたものの、どちらも良好群と比較して非良好群の方が成績は良かった。この結果から握力や立ち幅跳び、ボール投げにおいてそれぞれ発達を促進し得る好適な居住環境が存在する可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
体力の発達促進因子について「運動器健診」や「住環境」などこれまでに着目されてこなかった因子について、横断的な検討を進め、その成果を発表している(第79回日本体力医学会大会地方会,2017; 第80回日本体力医学会大会地方会,2017)。 一方で近隣の研究協力校園の確保についても進めているがまだその数は少なく、十分な統計的検出力を得るためにも、今後も引き続き協力を求める働きかけが必要と思われる。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度以降も引き続き、体力へ影響を及ぼす因子について横断的な探索を行う。またこれまでの成果と合わせ、縦断的な検討を行う。 解析1:両親の握力水準が子どもの体力に及ぼす縦断的な影響:説明変数に両親の握力、目的変数に子どもの体力を投入したロジスティック回帰分析や線形混合モデル等を用いた解析を行う。 解析2:住環境が子どもの体力に及ぼす縦断的な影響:説明変数に身体活動促進因子とされる住環境要因を、そして目的変数に子どもの体力を投入したロジスティック回帰分析や線形混合モデル等を用いた解析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
差額が発生した理由として、通信費について文書連絡を他の手段でまかなったためと考える。現時点において、研究実施計画の大規模変更の必要性には迫られていない。また、筋力等の測定に必要な機器や、データ保存や解析のための統計システムを含むコンピュータ等についても順調に稼働しており、新たな大型研究機器の導入や改修も現時点では必要としていない。従って、研究費の使用計画は概ね当初の計画通りの内訳となる予定である。 平成30年度の研究費使用内訳の予定として、物品費は、調査に必要な記録用紙等を作成するためのコピー用紙やトナー、そして調査で得られたデータを保存するための電子記録媒体(HDD、BD-R)等、消耗品の購入を中心とするほか、体力測定等で測定の手順を幼児に対して教示するためのタブレット端末の購入を予定している。そして調査で得られたデータの整理にあたる研究補助者の雇用に必要な人件費・謝金についても計上している。特に体力測定の実施、また結果集計等には労力と時間を必要とするため、是非とも研究補助者が必要である。次年度使用額はこれらに充当するとともに、予算を有効に活用することで、さらなる研究の進展を目指す。
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