研究課題/領域番号 |
17K13246
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
幸 篤武 高知大学, 教育研究部人文社会科学系教育学部門, 講師 (00623224)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 睡眠時間 / 握力の発達 |
研究実績の概要 |
本年度は睡眠時間が体力の発達に及ぼす影響について縦断的検討を行った。 解析対象者は、年中及び年少児85名のうち、1年ごとに行われた追跡調査に1回以上参加し、かつ解析に必要な変数に欠損のない61名であった。 幼児の睡眠時間は、平日と休日それぞれの就寝時刻と起床時刻について保護者に自記式の調査票への回答を求め算出した。平日、休日それぞれの睡眠時間について、10時間をカットオフとして対象児を2群に分けた。体力測定は、握力、ソフトボール投げ、反復横跳び、立ち幅跳び、25m走を実施した。また健康診断時における身長と体重からBMIを算出した。自記式の調査票を用いて「普段から身体をよく動かすか」、「習い事を行っているか」、「食事を意欲的に食べるか」について、保護者に回答を求めた。統計解析については、線形混合モデルを用いた。目的変数を体力のそれぞれとし、説明変数として睡眠時間、と調査参加回数を主効果とし、これらの交互作用項を投入した。調整変数はベースライン時の月齢、性、BMI、身体をよく動かすか、習い事の有無、食事への意欲とした。解析に用いたサンプル数は、延べ136名であった。 握力と休日睡眠時間との間にのみ関連を認めた。各群の調査回数に対する握力の発達の傾きは、休日睡眠時間が10時間以上群の傾きは2.64±0.17、10時間未満群の傾きは3.36±0.13となり、両群の傾きの間に差を認めた(p<0.05)。 幼児61名を対象に2年間追跡を行い、睡眠時間が体力の発達に及ぼす影響を検討した結果、休日の睡眠時間が10時間未満である幼児は、10時間以上の幼児と比較して、握力の発達が良好である可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
仮想RCTに必要なデータの蓄積は進んでいるものの、アウトカムに据える学力に関するデータ収集が遅れている。年度末より研究の進捗に対して新型コロナウイルスの影響が現れており、データ収集の体制を検討する必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに蓄積されたデータを元に、体力へ影響を及ぼす因子について仮想RCTを用いるなどして、縦断的な探索を行い成果をまとめる。 解析1:睡眠時間が子どもの体力に及ぼす縦断的な影響:説明変数に子どもの睡眠時間、目的変数に子どもの体力を投入した線形混合モデルや一般化推定方程式による解析を行い、体力の発達に睡眠時間が与える影響について縦断的に検討する。 解析2:食事摂取状況が子どもの体力に及ぼす縦断的な影響:説明変数に子どもの食事摂取状況、目的変数に子どもの体力を投入した線形混合モデルや一般化推定方程式による解析を行い、体力の発達に食事摂取状況が与える影響について縦断的に検討する。 解析3:測定された各変数から子どもの背景因子を調整し、子どもの体力の発達を促進するための因子を探索する。
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次年度使用額が生じた理由 |
旅費や文章通信費を圧縮した結果、生じた差額であり、予算は概ね適性に執行されていると考える。令和2年度は、物品費として、調査に必要な記録用紙等を作成するためのコピー用紙やトナー、そして調査で得られたデータを保存するための電子記録媒体(HDD、BD-R)等、消耗品の購入を中心とする。 そして調査で得られたデータの整理にあたる研究補助者の雇用に必要な人件費・謝金についても計上している。特に体力測定の実施、また結果集計等には労力と時間を必要とするため、是非とも研究補助者が必要である。予算を有効に活用することで、さらなる研究の進展を目指す。
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