研究実績の概要 |
本研究は、7-ベンジリデンナルトレキソン(BNTX)誘導体が有する抗トリコモナス活性に着目し、その作用機序の解明を目指すと共に、構造活性相関研究を通じて既存薬のメトロニダゾールに匹敵するような活性化合物を見出す事を目的としたものである。 平成30年度の計画に従い、新たに30検体ほどのBNTX誘導体を合成して抗トリコモナス活性評価を行ったが特に著しい結果は見られなかった。また、前年度に見出した新奇転位反応(ナルトレキソン誘導体と2-ピリジンカルボキシアルデヒドによる反応)は、17位窒素上の置換基がシクロプロピルメチル(CPM)基以外の置換基でも同様に進行する事を確認した。 これらの転位成績体のオピオイド受容体結合試験の結果は、非常に興味深いものであった。まず転位成績体のうち、Favorskii型中間体に反応溶媒のメタノールが求核付加したメチルエステル誘導体に関しては、特に窒素上の置換基がCPM基の時、オピオイド受容体と非常に強く結合した(MOR:Ki=1.49nM, DOR:Ki=1.94nM, KOR:Ki=0.795nM)。また、窒素上の置換基を変えることによって受容体への親和性や受容体タイプ選択性が大きく変化することも見出した。一方、転位成績体のうちスピロ-γ-ラクトン構造を有する化合物については、ほぼ全ての化合物がDOR(δオピオイド受容体)に対して選択性を示す結果となり、特に窒素上の置換基がCPM基の化合物とフェネチル基の化合物については強いDORアゴニスト活性を示した。このフェネチル基置換スピロ-γ-ラクトン転位成績体については、有望なDORアゴニスト候補化合物であることからin vivo評価も行ったところ、投与量依存的に十分な鎮痛作用を示す結果となった。
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