本研究の目的は、申請者等が開発した新規リガンド開発のための方法論を用いて、内在性リガンドを模倣する新規共有結合性PPARγアゴニストを創製し、その作用機序を明らかにすることである。 令和2年度は、前年度に行ったRNAシーケンス解析の結果に基づき、試験化合物による抗炎症活性およびその作用機序の解析を実施した。Raw264細胞においてGriess法を用いて一酸化窒素産生量を測定した結果、LPS刺激により誘起された一酸化窒素産生が、試験化合物の投与により抑制されることが明らかになった。また、炎症応答遺伝子の転写を制御するNF-kBの応答配列にルシフェラーゼ遺伝子を接続したレポータープラスミドを用いて、NF-kB転写活性に与える影響を評価した結果、TNF-αにより増大したNF-kB転写活性が、試験化合物により抑制された。これらの作用は、共有結合型リガンド、ならびに非共有結合型化合物の両者ともに、PPARγの不可逆的アンタゴニストであるGW9662の共処理により打ち消されたことから、両化合物ともにPPARγ依存的に作用を引き起こしていることが明らかになった。炎症性サイトカインの産生に与える影響をELISA法を用いて評価した結果、共有結合型リガンドはLPS刺激に伴うIL-6産生量を抑制した一方で、非共有結合型リガンドはIL-6の抑制が認められなかったことから、制御する炎症関連遺伝子ならびに作用機序に違いがあることが明らかになった。
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