研究課題
平成29年度はカルシニューリン活性の光操作ツールの開発のため、カルシニューリン光操作ツールのコンストラクションを行うとともに、スクリーニングを行うための生化学的・細胞生物学的評価法の整備をおこなった。まず、光活性型カルシニューリン(PA-CaN)を作成するため、カルシニューリン酵素に対して光依存的にコンフォメーション変化を誘導するドメインを挿入したコンストラクトを作成した。このコンストラクトの光依存性を評価するためのカルシニューリン活性検出系として、基質からの遊離リンを測定する方法の予備検討を行い、培養細胞に発現させたカルシニューリンの活性化を検出することができた。また、上記で作成したコンストラクトについて、光依存的な活性化を評価するための生化学的・細胞生物学的な評価系として、光活性化に用いる波長とは重複しない長波長での測定が可能なカルシニューリンの活性化を検出するFRETセンサーを開発し、神経細胞において刺激依存的なFRETシグナル変化を起こすことを確認した。また、カルシニューリン基質NFATの核移行可視化コンストラクトを作成し、培養細胞においてCa2+上昇操作(サプシガラジンの添加)によって核移行が誘導されること、そしてそれがカルシニューリン活性に依存することを薬理学的に確認し、細胞生物学的な評価方法としてこの系を立ち上げた。また、精製カルシニューリンを用いた生化学的な検出法についても予備検討を行い、光依存的阻害ペプチドを評価するための生化学的評価として確立した。
2: おおむね順調に進展している
スクリーニング・評価のための生化学的・細胞生物学的なカルシニューリン活性化の評価方法を確立させることができ、今後の光操作ツールの改良・評価を進める基盤ができた。また、長波長型のカルシニューリンFRETプローブを開発することに成功するとともに、赤色蛍光タンパク質融合型NFATの核移行を用いて光刺激に伴うカルシニューリンの活性化スクリーニングを行うことが可能となった。光操作ツールの作製についても、コンストラクションが進んでおり、以上よりおおむね順調に進展している。
平成30年度は、29年度に開発されたカルシニューリン光操作ツールの評価・改良を行うとともに、培養神経細胞での神経可塑性における時空間パターンの役割解明、学習におけるカルシニューリン活性の時間パターンの生理的意味の検討を行う。まず、H29年度に引き続いてカルシニューリン光操作ツールの作製と、細胞生物学的な評価を行う。特に、光依存性を欠失させたコンストラクト(光活性化状態を模倣する変異、暗抑制状態を模倣する変異)を用いることで、光照射を用いずに操作ツールの評価を行う。そして、光依存的な酵素活性化、阻害効果の認められたコンストラクトをテンプレートにして、光依存的ドメインを融合するリンカー配列や、挿入位置などを微調整・最適化することでより光依存的活性化のダイナミックレンジが大きく、かつ暗状態での基底状態での活性が低いもの光操作ツールの開発を試みる。これまでに、単一シナプスでの構造的可塑性(体積増大)が起こる際に、カルシニューリンがシナプスおよび樹状突起において活性化することを見出している。そこで、光操作ツールを培養神経細胞に発現させ、共焦点顕微鏡を用いて青色光レーザー(458nm)照射により様々な時空間パターンでカルシニューリンを活性化・抑制した場合の神経機能への影響を検討する。また、カルシニューリンを介した神経活動依存的な転写活性化機構の制御に対しても、同様に光操作ツールを用いてカルシニューリン活性の時空間パターンの意義を検討する。
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