本年度は6名分の言語課題における脳磁図計測とWAIS-Ⅲ、WMS-Rといった認知機能検査データの収集を行った。被検者数は合計で高齢者14名、若年者16名の検査データとなった。その後、昨年度に集積したデータと統合し、解析を行った。 それぞれの言語課題時の脳磁図データについて、時間周波数解析を用いて事象関連同期(Event-related synchronization: ERS)、事象関連脱同期(Event-related desynchronization: ERD)といった脳律動変化をalpha(8-13Hz)、beta(13-25Hz)、low gamma(25-50Hz)の3周波数帯域で算出し、二群間の比較をした。結果、若年群では主に両側後頭部にERDを認めたのに対し、高齢群では後頭部だけでなく、alpha、beta帯域で左側頭部から前頭部にかけてERDを認めた。さらに、若年群と比較し、高齢群ではalpha帯域で左前頭部に有意なERDの差を認めた。 また、それぞれのERDの強度と認知機能検査における言語性IQと言語性記憶力の2項目について関係性を検討した。結果、ERD強度と言語性IQの間には有意な相関は認められなかったが、ERD強度と言語性記憶力の間には若年群においてalpha帯域の左島皮質、beta帯域の左中後頭部において有意な負の相関が認められた。 以上の結果から、言語性記憶力が低いほどERD強度が強い傾向が認められ、言語課題時の脳活動強度が言語記憶力の指標となる可能性が示唆された。
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