研究実績の概要 |
本年度は、MT野の神経投射を明らかにした論文を発表した。 研究には2頭のマーモセットを用いた。最初に、麻酔下で、硬膜を残したまま光学内因性信号計測を行い、MT野を含む範囲のレチノトピーマップを作成した。それに基づいて、中心窩、周辺上視野、周辺下視野に対応するMT野内の3箇所に、異なる蛍光タンパク質を発現する順行性のウイルストレーサーを注入した。注入してから3週間後に灌流固定を行い、脳切片を作成し、蛍光画像を取得して解析した。 MT野からは、後頭葉(V1野,V2野,V3野,V4野)、側頭葉(MTC野, MST野, FST野, FSTv野)、頭頂葉(V3A野,V6野,V6A野,AIP野,LIP野,MIP野)、前頭前野皮質(8野)ならびに第一次運動野に投射していることが分かった。2つの注入を行った個体では、どちらの注入もAIPと8野への投射が見られたが、投射先の重なり合いは見られなかった。このことから、MT野からAIPならびに8野への投射は、視野内の空間に対応した神経投射関係があることが示唆された。第一次運動野への投射は、他の動物種も含めて初めて得られた知見である。投射先のほとんどの脳領野は、3つのトレーサー注入において共通に見られた。 これらの神経投射先を、視覚の研究で広く用いられているマカクザルの神経解剖学的研究で得られた知見と比較して検討した。ほぼすべての神経投射先は、マカクザルと同様なものであり、マーモセットは視覚の研究においても、ほぼ同等なモデル動物として検討可能なことが示唆された。
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