本年度は、カルシウムセンサー(GCaMP6s)をウイルスベクターにより頭頂葉後部領域に発現させ、その後、広域観察窓を設置した。この動物について、意思決定課題の訓練を行い、課題遂行中の神経活動を検討した。ランドマークとなる脳溝が殆どないマーモセットの脳はイメージングには適するが、その反面、研究対象とする脳領野の同定に困難が生じる。このため、ウイルスベクター注入ならびに観察窓の設置箇所については、in vivo MRIとCTを用いて、実験個体の脳に脳アトラスをレジストレーションを行い、その推定された部位を対象にウイルスベクターの注入と広域観察窓の設置を行った。意思決定課題としては、知覚的意思決定課題を訓練するには困難が伴ったことから、報酬を用いる意思決定課題に変更して検討した。1光子マクロ蛍光観察を行った所、前述のMRI/CTのレジストレーションにより、広域観察窓に含まれると推定された領域の視覚野(V6(DM)、V3(VLP)、V3A)の視覚応答が観察された。また、視覚野の前方にも、視覚応答がある領域があり、そこがLIP野と推定された。次に、報酬を用いる意思決定課題を遂行中の神経活動を解析した所、そのLIP野と推定された領域は、直前の試行の報酬に応じて統計的に有意に神経活動を変化させた。また、視覚野については、そのような直前の試行の報酬に応じた神経活動の変化は見られなかった。これらのことは、前述の領域はLIP野であるという推測を支持する。今後、同個体について2光子イメージングの実施と、もう1個体でのデータ収集が終わり次第、研究成果を論文として発表する予定である。
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