研究実績の概要 |
サルを用いた実験に先立ち実施していたギャンブル依存症(GD)患者を対象とした脳画像研究について、解析を進め論文を発表した(Fujimoto et al., Transl Psych, 2017)。続いて、サルのリスク下意思決定の神経メカニズムについて調べるため、サル用の意思決定課題を開発した。行動データについて経済学モデルを用いた解析を行ったところ、サルのリスク選好性は従来の報告より多様であることが明らかとなった(Fujimoto and Minamimoto, under review)。また、類似の意思決定課題遂行中の大脳基底核における神経活動記録実験を行い、腹側淡蒼球(VP)が尾状核吻内側部(rmCD)より強い報酬価値表現を持つことがわかり、リスク下意思決定にも関連する基底核局所回路の仕組みが明らかとなった(Fujimoto et al., J Neurosci, 2019)。これらの知見をもとにリスク下意思決定に関連する神経ネットワークを明らかにするため、代表的な化学遺伝学的手法であるDREADDsの改良を進め、従来のDREADDアゴニストであるCNOに比べ選択性や脳透過性、代謝安定性が大幅に改善された新規アゴニストの開発に成功した(Nagai et al., under review)。抑制性のDREADDであるhM4DiをVPや腹側被蓋野に導入し、人工受容体の発現をPETイメージングを用いて確認し、これらが生体内で機能するという予備的な知見を得た。これらの成果から、リスク下意思決定に関連する神経ネットワークの一部が明らかとなった。
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