研究課題
歩く、走る、何かを掴むといった運動に伴って、脳は特定のパターンを持った神経活動を生成する。運動の学習は、その運動をコードする神経活動を安定に再現できるようにして、ばらつきの少ない動作を可能にする。しかし、安定な神経活動がどのように形成されているのかはよくわかっていない。本研究では運動中のマウス一次運動野でニューロンのスパイク活動とシナプス入力を計測し、光遺伝学的に神経活動へ内因的な外乱を加えた時の変化と、元の活動へと収束していく過程を解析する事によって、運動実行に関わる神経活動がどのようなシナプス入力によって形成され、安定化されているのかを明らかにする。運動課題実行中のマウス大脳皮質運動野で単一神経細胞からスパイク活動とシナプス入力を記録するためには、長時間安定したパッチクランプ記録を行う必要がある。そこで、平成29年度は、パッチクランプ用ガラス電極形状、電極内液、記録用ガラス窓の形状等について最適化を進めた。また、同じ訓練個体から複数日にわたり記録を行うためのガラス窓設置方法を検討した。これにより、2光子顕微鏡下で運動課題実行中のマウス一次運動野において興奮性・抑制性シナプス入力を単一の神経細胞から記録する実験方法を確立する事ができた。また、電気記録用のガラス窓を用いて2光子イメージング法による神経細胞活動の計測が可能かどうかについても検討を進め、イメージング用のガラス窓と同等の記録が可能である事を確認した。
3: やや遅れている
平成29年度には、運動課題実行中のマウス大脳皮質一次運動野の単一神経細胞からスパイク活動と興奮性・抑制性シナプス入力を計測する事を目的としていた。これまでに、シナプス入力を記録する実験系を確立する事が出来たが、これに加え、スパイク応答を記録する事が困難であった。現在は十分な記録時間を確保するために実験方法の最適化を進めており、来年度には予定していた計画を遂行する予定でいる。
平成30年度には、引き続き、in vivoホールセル記録実験の最適化を進め、単一神経細胞からのスパイク活動、シナプス入力記録を行う。また、スパイク活動記録の代わりに、in vivo 2光子イメージング法によってあらかじめ運動課題中の神経活動を記録しておき、その後パッチクランプ記録を適用する方法についても検討を開始する。また、光遺伝学的に神経活動を操作する方法については、ウイルス打ち込みのパラメータを最適化し、30年度後半には光遺伝学とホールセル記録を組み合わせた計測を開始する予定でいる。
本年度の研究が遅れており、実験に必要な物品、試薬等の購入が予定していたよりも少なかった。来年度は遅れている分も含め、研究を進める予定でおり、29年度の未使用分も合わせ、予定していた物品などの購入に充てる。
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Nature Communications
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