研究課題
歩く、走る、何かを掴むといった運動に伴って、脳は特定のパターンを持った神経活動を生成する。運動の学習は、その運動をコードする神経活動を安定に再現できるようにして、ばらつきの少ない動作を可能にする。しかし、安定な神経活動がどのように形成されているのかはよくわかっていない。本研究では運動中のマウス一次運動野でニューロンのスパイク活動とシナプス入力を計測し、光遺伝学的に神経活動へ内因的な外乱を加えた時の変化と、元の活動へと収束していく過程を解析する事によって、運動実行に関わる神経活動がどのようなシナプス入力によって形成され、安定化されているのかを明らかにする。平成30年度は29年度に引き続き、運動課題実行中のマウス大脳皮質運動野で単一神経細胞からスパイク活動とシナプス入力を記録するための実験方法最適化を進めた。また、in vivoホールセル記録によるスパイク活動の計測の代替法として、事前にin vivo2光子イメージングによって運動課題中のカルシウムイメージングを行い、活動パターンを同定した細胞に対してホールセル記録を行う方法についても検討を進めている。これまでに、AAVインジェクション方法やガラス窓の設置方法等、2光子イメージングを行うためのパラメータを最適化し、実際に神経活動を記録できる事を確認した。また、麻酔下ではあるものの、シナプス入力を記録しながら光刺激を行う実験系についても検討を進めた。
3: やや遅れている
平成30年度には、運動課題実行中のマウス大脳皮質一次運動野の単一神経細胞からスパイク活動と興奮性・抑制性シナプス入力を計測する事、また、シナプス入力を記録しながら記録細胞周辺の神経活動を光遺伝学的に攪乱する実験系の確立を目的としていた。これまでに、麻酔下ではあるものの、光遺伝学的な方法によってシナプス入力に変化が生じる事を確認している。現在は運動課題実行中のマウス大脳皮質においても同様に光遺伝学的な方法とホールセル記録を組み合わせる方法の検討を進めている段階にある。
2019年度には、引き続き、記録実験方法の最適化を進め、単一神経細胞からのスパイク活動、シナプス入力記録を行う。また、引き続き、スパイク活動記録の代わりに、in vivo 2光子イメージング法によってあらかじめ運動課題中の神経活動を記録しておき、その後パッチクランプ記録を適用する方法、これらの計測方法と光遺伝学的手法を組み合わせ、運動課題実行中の大脳皮質で光遺伝学的に神経活動へ内因的な外乱を加えた時の変化と、元の活動へと収束していく過程を解析する。
本年度の研究が遅れており、実験に必要な物品、試薬等の購入が予定していたよりも少なかった。来年度は遅れている分も含め、研究を進める予定でおり、30年度の未使用分も合わせ、予定していた物品などの購入に充てる。
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