研究課題
歩く、走る、何かを掴むといった運動に伴って、脳は特定のパターンを持った神経活動を生成する。運動の学習は、その運動をコードする神経活動を安定に再現できるようにして、ばらつきの少ない動作を可能にする。しかし、安定な神経活動がどのように形成されているのかはよくわかっていない。本研究では運動中のマウス一次運動野でニューロンのスパイク活動とシナプス入力を計測し、光遺伝学的に神経活動へ内因的な外乱を加えた時の変化と、元の活動へと収束していく過程を解析する事によって、運動実行に関わる神経活動がどのようなシナプス入力によって形成され、安定化されているのかを明らかにする。スパイク活動とシナプス入力を運動中のマウス大脳皮質で記録するためには体動などに起因する組織の揺れなどを十分に抑え、長時間安定した記録を行う必要がある。そのため、2017年度は記録用ガラス電極、脳観察用のガラス窓の設置方法について検討し、運動課題実行中のマウス一次運動野において興奮性・抑制性シナプス入力を単一の神経細胞から記録する実験方法を確立した。2018年度には、運動課題中のマウス大脳皮質で単一神経細胞からスパイク活動とシナプス入力を記録するための実験方法最適化を進めた。また、電気生理学的なスパイク計測法の代わりに2光子イメージング法によって神経細胞活動を記録し、運動中の活動パターンを同定する方法についても検討を進めた。2019年度は2018年度に引き続き、2光子カルシウムイメージングによる単一神経細胞の活動パターン同定法について開発を進めた。また、イメージングで同定した神経細胞に対してin vivo ホールセル記録によってシナプス入力を計測するための方法についても検討を進め、クオリティは低いものの、実際に記録を行う事が可能である事を確認した。
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Current Opinion in Neurobiology
巻: 64 ページ: 103~110
doi:10.1016/j.conb.2020.02.013
Proceedings of the National Academy of Sciences
巻: 116 ページ: 22844~22850
doi:10.1073/pnas.1903445116