研究課題/領域番号 |
17K13280
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
加藤 美保子 北海道大学, スラブ・ユーラシア研究センター, 特任助教 (70612018)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ロシア外交 / 東方シフト / 中ロ関係 / 日韓関係 / 同盟 / アメリカ / 領土問題 |
研究実績の概要 |
最終年度に当たる令和2年度は、COVID-19の世界的流行と感染対策により、出張を伴う学会報告や調査が制限され、予定していた研究活動を実施できなかったが、オンラインでの国内外のシンポジウム・研究会へ参加することによって、研究成果の整理・取りまとめに力を入れ、海外の研究者との意見交換を継続する努力をした。 特に、本研究課題の副題である「中国中心主義から多角化への以降とその問題」について、過去5年間の世界政治と中ロ関係の動向を分析し、ロシアがアジア政策の多角化よりも中国との安全保障分野での連携強化に傾斜している背景と、その方針の結果として表面化している現象について考察し、次の2つの論文にまとめた。一つ目は、モスクワにある世界経済国際関係研究所の依頼で執筆した論文"Competing Sovereignties: Increasing Tensions over the Maritime Border in Northeast Asia" (Pathway to Peace and Security, Vol. 58, No. 1)である。この論文では、トランプ政権による同盟国軽視を背景に、悪化する日韓関係の象徴である竹島/独島の領土問題を巡って、ロシアが中国との連携を背景として係争地の上空や日韓が主張する防空識別圏に侵入して関係各国の反応を見る行為を活発化させている実態と、関係各国の主張と対立点を整理した。二つ目は、北海道大学スラブ・ユーラシア研究センターで開催された夏期国際シンポジウムでの報告ペーパーで、主権規範を手掛かりに、中台関係、南北朝鮮問題、米日韓、がそれぞれの関係において国内主権の最大化を巡って緊張を抱えている北東アジアの国際関係の構造と展望について検討した。本論文は、同シンポジウムでのコメントや意見交換を踏まえて改稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の当初の目的は、クリミア編入(2014年3月)を転機としてロシアの外交原則が変更されるのかどうか、現状維持と修正主義、欧米と非欧米の論理がせめぎ合うアジア太平洋地域に焦点を当てて検討することであった。この点については、2010年代の初頭まで、中国との関係強化を維持しながらアジア外交の多角化を目指していたロシアが、アメリカとの対立の深刻化などを主な要因として、時間を要する日韓との全方位の関係拡大よりも、中国との軍事面での連携強化を選択していった背景と、アメリカ主導の秩序への「探り」・「挑発」行為を活発化させている実態を観察し、その論理について発表してきた点は、本プロジェクト独自の成果であり、順調な進展を示していると言える。 一方で、3年目の終わりから最終年度にかけて予定していた調査や単著としての成果出版はコロナ問題の影響も相俟って進捗が遅れている。そのため、「おおむね」順調という評価が妥当だと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
国内の社会状況や、調査を予定していた海外の各地域の情勢をよく考慮して、オンラインで可能な意見交換や研究報告はオンラインで実施する。そして、令和2年度までに執筆した英語論文や和文の研究ノートを個々の刊行物としてまとめる作業に力を入れていく。また、本プロジェクトの最終成果として、研究課題を総括することを令和3年度の大きな課題と位置付ける。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた主な理由は、新型コロナウィルス感染症の世界的流行により、国内外の出張が制限され、旅費として想定していた直接経費が使用できなかったことである。令和3年度も前述の感染症対策が継続する見込みである。そのため、次年度使用額は、研究代表者の研究機関変更により、異動先の図書館に所蔵されていない文献や定期刊行物の購入・購読の費用に充てたい。また、研究成果の執筆に取り組むことから、英文校閲費用にも充てたいと考えている。
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