研究課題/領域番号 |
17K13282
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研究機関 | 東京外国語大学 |
研究代表者 |
日下部 尚徳 東京外国語大学, 世界言語社会教育センター, 講師 (60636976)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 災害脆弱性 / バングラデシュ |
研究実績の概要 |
本研究は、サイクロンをはじめとする災害被害が甚大なベンガル湾沿岸地域における災害脆弱性とレジリエンスに関し、調査・研究するものである。 2年目となる2018年度はベンガル地域のみならず世界全体の災害関連資料および最新の統計データの収集に努めると同時に、バングラデシュにおいて女性の抱える災害脆弱性に関するフィールドワークを実施した。フィールドワークは、1991年サイクロンによって甚大な被害が発生した南東部のコックスバザール県周辺で実施した。南部沿岸地域においては、国際援助機関によって様々な防災プロジェクトが実施されており、それらの有効性を住民の視座から考察する上で重要な地域となっている。また、コックスバザール県においては、2016年からロヒンギャがミャンマー側から越境してきており、その数は計100万人以上となっている。もともとサイクロンや土砂崩れなどの災害リスクが高い地域に、生活の基盤が不安定な難民が大量に押し寄せたことから、政府および国際援助機関は対策におわれている。これらの地域においては、日本政府も多大な防災支援を実施している一方で、その政策効果に対しては十分な基礎的研究がなされていないことから、本研究が国際援助における防災支援の政策的インプリケーションに果たす役割は大きいと思われる。フィールド調査においては、被害拡大要因としての災害脆弱性の構成要素の検討および、ジェンダー課題との関連性をフォーカスグループディスカッションをもとに考察した。また、災害被害を受けた世帯の中で、生活再建のために子どもを出稼ぎにだす家庭の存在が明らかになったことから、都市部において追加調査をおこなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究活動は全体としてほぼ予定通りのスケジュールで進展しているが、現地調査に関してはテロや難民発生などによるバングラデシュの不安定な治安情勢から一部日程等の変更を余儀なくされた。また、安全対策のための情報収集や宿泊先の選定、移動手段の確保に費用と時間が割かれたが、成果発表については予定通りに進展しており、全体としては本来の目的に沿った研究活動を順調に展開できている。
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今後の研究の推進方策 |
ベンガル湾沿岸地域における複数のフィールド調査結果をもとに、地域間比較の基盤となる、背景としての政治、宗教、社会制度、経済情報も活用した地域研究 モノグラフを作成する。これにより地域ごとに異なる防災特性を浮き彫りにすることに努めたいと考えている。また、最終年度として英文、もしくは日本語での単著の執筆準備をすすめる。さらに、2019年度は災害問題にも言及した南アジア地域関連書籍の出版を予定しており、本研究成果を取り入れた論文執筆に注力する。編者として関わることで、 本研究のアイデアを南アジア各国を専門とする研究者と共有し、さらなら研究課題の抽出を目指す。また、地域に特化した研究者コミュニティの学会(日本南アジア学会他)と、開発協力に特化した研究者コミュニティが存在する学会(国際開発学会、国際ボランティア学会他)の双方で研究発表を行うことで、研究内容 を地域研究の視点からも、開発研究の視点からもより了解可能性の高いものに昇華したいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
フィールドワークに関する旅費や調査関連費用を大学の基盤研究費等で対応したため。
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