研究課題/領域番号 |
17K13283
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研究機関 | お茶の水女子大学 |
研究代表者 |
紺屋 あかり お茶の水女子大学, 理学部, 学部教育研究協力員 (90757593)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | オーラリティ / 口頭伝承 / 身体知 / アーカイブズ / デジタル・ヒューマニティーズ / 言語継承 / 太平洋島嶼 / パラオ |
研究実績の概要 |
本研究は、母国語消滅危機に直面している西太平洋島嶼のパラオを対象に、口頭伝承の採集・ 分析・アーカイブ化まで包括的に行う実践的研究である。パラオの口頭伝承は、「語り」「詠唱」「踊り」「図像」の 4 形態で伝承される。本研究では主に、①全州・全島レベルでの口頭伝承の採集・分析・翻訳、② 音声解析(Praat)などを用いた「語り」の定量化、③デジタルツールを用いたアーカイブズの作成の 3 点を中心課題とする。 本研究の特徴は、歴史資料とフィールドデータとを往復しながら口頭伝承の変容過程を明らかにすること、さらに、ジェスチャー言語などの言語 表象(身体知)をめぐる科学的分析への試みにある。上記の研究を通じて、太平洋島嶼地域における言語継承ならびに、オーラリティ研究に関する新しい方法論の構築を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの調査・分析は概ね順調に進んでいる。 本年度は、集会所の梁に図像化された村落歴史語り(本研究ではバイ・ストーリーと呼ぶ。バイ(bai)とはパラオ語で集会所の意)の採集、翻訳、アーカイブ化の作業を進めた。調査は、バベルダオブ島の3州(Bai Melekeong :マルキョク州, Bai Rekeiai :アイメリーク州, Bai ra Ordomel:アイライ州)を対象として行った。集会所の梁は一棟につきおよそ30-35梁ほどで構成されているが、村落歴史の図像が描かれた梁はその中でも8梁ほどである。梁の両面に異なる伝承が図像化されているため、16図像×3棟= 45種の異なる歴史語りの口頭伝承の採集を進めている。上記の調査と並行して、アーカイブ作成用の映像・写真・音源の撮影、録音を行なっている。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度と継続して、バイ・ストーリーの採集に伴うフィールドワークを中心に研究を進める予定である。今後は、上記の採集作業と並行して、歴史資料と比較しながら語りの編成過程の解明を進める。その際、主にドイツ植民地時代(1899-1914)の民族誌を用いる。 バイ・ストーリーは、図像表象、語り、踊り、詠唱の4形態によって継承される口頭伝承である。本研究では、ドローン映像、写真、アニメーション、音声などを用いて記録映像としてデジタルツールとして資料化している。これらのアーカイブは、各州政府へ知的還元される他、ベラウ国立博物館(Belau National Museum ※ベラウはパラオの呼称)での展示、PCC(Palau Community College)でのワークショップ、オンラインエキシビジョン(太平洋島嶼小国家の文化継承を推進するNPO団体のWebページ)などで公開予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
想定していた国際学会参加申し込み費用が、次年度払いへ変更になったため。
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