最終年度にもフィールドワークを実施することは実現できず、文献研究や学会発表、論文の執筆が中心作業となった。Encountering Others within: Critical Studies of mobility and ethnicity in Chinaというタイトルの英語論文特集を台湾の『亞太研究論壇』に投稿する計画については、執筆作業はほぼ終了し、2023年度中に投稿予定である。 新型コロナウイルスの蔓延に伴い、中国の国内移動の様相そのものが大きく変化してきている。なかでも雲南省においては、越境移動が厳しく制限されるようになり、国境に物理的な壁が建設された。本研究期間中に唯一実施できたフィールドワークである2019年度のミャンマーと雲南省での越境移動に関する調査成果についても、この事態と突き合わせて議論する必要があるため、2023年度夏に調査を実施し、その成果と併せて京都大学東南アジア地域研究研究所のSoutheast Asian Studiesに投稿予定である。 本研究期間全体を通じて、単著『娘たちのいない村-ヨメ不足の連鎖をめぐる雲南ラフの民族誌』の出版、共著書籍『中国の国内移動-内なる他者との邂逅』の刊行を実現させ、国際ワークショップを2回実施し、論文を5本(本課題のみの投稿論文は3本)執筆し、中国における女性の移動とジェンダーについて地域間比較研究の成果を複数出すことができた。フィールドワークの実施可能性が断たれたのちも、他の研究者や研究資金などと補完関係を持ちつつ、中国国内の移動の動態を地域間比較し、議論の土台を築くことができた。
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