研究実績の概要 |
本研究の目的は、ベトナム―カンボジア国境に跨る広大な政治的辺境世界「ウォーター・フロンティア」の意義を問い直し、東南アジア大陸部の社会―国家関係の変遷を解明することにある。2020年度は、コロナ禍によってフィールドワークを実施することができなかったため、研究計画を1年間延長する手続きを行った。こうした事情により、調査という点では新たな進展は見られなかったものの、いくつか研究業績を刊行することができた。本科研の研究内容と直接関連する業績は下記2点である。1)単著著書『国家の「余白」―メコンデルタ 生き残りの社会史』(京都大学学術出版会、2021年2月)、2)Shimojo, Hisashi, “Local Politics in the Migration between Vietnam and Cambodia: Mobility in a Multi-Ethnic Society in the Mekong Delta since 1975.” Southeast Asian Studies 10 (1), pp. 89-118, April 2021 これらの研究は、ベトナム―カンボジア国境の近現代の越境移動について、フィールドワークでの聞き取り調査を踏まえて詳細に論じたものである。さらには、戦後日本のベトナム研究の傾向について、Shimojo, Hisashi, “From “Ideal Social Model” to Reality: Vietnamese Studies in Japan.” The Journal of Vietnamese Studies 16 (1), pp. 4-47, February 2021 としてまとめた。上述のとおり、2020年度は、フィールドワークを実施することはできなかったものの、多くの研究業績を提示することができた。
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