研究課題/領域番号 |
17K13291
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研究機関 | 広島市立大学 |
研究代表者 |
目黒 紀夫 広島市立大学, 国際学部, 講師 (90735656)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | マサイ / 伝統 / 表象 / グローバリゼーション / 環境保全 / アフリカ |
研究実績の概要 |
平成30年度は8月から9月にかけてと、12月、3月の3回にわたってケニアの首都ナイロビと南部のアンボセリ地域において現地調査を行なった。現地調査では、2018年12月に開催された第4回マサイ・オリンピックの前日と当日の様子を観察するとともに、それに出場してきた地域の若者たちや主催NGOで働く地元出身の長老など、地域の様々な人々を対象にして聞き取り調査を行なってきた。この結果、前回までとは異なる地域の若者たちが参加している理由として、主催NGOと地域社会の間で生じた便益分配をめぐる軋轢があることが明らかとなった。またそれ以外の面でも、主催NGOの便益分配への不満が地域社会内で高まっているとの情報も得た。そうした事情を知ることで、どのようにマサイ・オリンピックの内容が変化をしているのか、その経緯を把握することができた それ以外の期間は日本国内で文献調査、研究発表、論文執筆などを行なった。今年度の結果の一部は、アフリカ人研究者も多数参加して開催された国際シンポジウムで発表するとともに、マサイ文化の核とされる「尊敬」という概念をめぐる表象と認識についての調査結果は英語論文として投稿しており、未刊行ではあるが査読の結果として掲載が決定し、原稿は受理済みである。またこれまでの研究成果の一部である「伝統」についての地域の若者たちの融通無碍な態度については、現代における東アフリカ牧畜社会の動態を主題とする学術書(共同執筆)の一章として公表もした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マサイの伝統の表象に関して、昨年度までは環境NGOや大衆メディアなどの外部者がどのようなイメージやストーリーをグローバルに発信しているかを調査してきた。それに対して今年度は、長老階梯と青年階梯のリーダーの協力を得て、小規模ながらマサイ・オリンピックについて話し合う集会を開くことで、住民の意見をより詳しく知ることができた。また、マサイ・オリンピックを主催する環境NGOで要職に就いている地元住民に聞き取りをすることもでき、公式ウェブ・サイトなどでは明らかにされていない事情を知ることもできた。これらの結果、マサイの伝統の表象に関するマサイの側の現状認識や外部者による表象の適切さについてより詳しくことができた。当初の予定通りではあるが、このようにマサイの伝統の表象についてより多面的に考察するための情報を収集することができたので、おおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度である今年度は、マサイ・オリンピックの「スポーツ」としての側面を分析した上で、これまでに展開してきた保全と開発の文脈における議論と統合し、投稿論文として投稿することを目指す。
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