マサイはアフリカに暮らす民族のなかでも世界的に広く知られる民族だが、今なお伝統に強くこだわる人びとというイメージが根強い。実際には、マサイの人びとは西洋的・近代的な開発も積極的に受容している。その一方で、外部者が抱くイメージを理解し、それに沿った言動を取ることで開発援助を始めとする恩恵に預かろうとしてもいる。本研究ではそうしたマサイの人たちの振る舞い、すなわち「ポジショニングス」について、マサイ・オリンピックというスポーツ・イベントを事例として調査した。その結果、マサイの人たちの「ポジショニングス」の実践は多様性を増しているが、便益の獲得には必ずしもつながっていない事実を明らかにした。
|