研究課題/領域番号 |
17K13293
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研究機関 | 東京外国語大学 |
研究代表者 |
三代川 寛子 東京外国語大学, 世界言語社会教育センター, 講師 (90614032)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | エジプト / キリスト教 / 近代史 / ナショナリズム |
研究実績の概要 |
本年度は、コプトの宗教的アイデンティティとナショナリズムの関係についての研究の一環として、19世紀末のコプト知識人が執筆した歴史書『コプト共同体の歴史』の分析と、近現代のコプトに関する研究の発展について調査を行った。 また、その成果を国際学会などで発表し、それぞれフィードバックを得た。 加えて、一般向けの講演会などを通して、中東の宗教的多様性やキリスト教世界の多様性についての知見を社会に還元した。 19世紀以前、コプトの歴史は教会の歴史として書かれる傾向が強かった。そうした教会史の中では、福音記者マルコによるエジプト布教とアレクサンドリア教会の設立が非常に重視されてきたのであるが、今回取り上げた『コプト共同体の歴史』では、それ以前の古代文明の時代から歴史が書き起こされており、エジプトにキリスト教がもたらされたことは非常に簡単に言及されているに過ぎない。他にも、同書にはコプトの歴史を「教会の歴史」から脱皮させようと試みた痕跡が見られ、コプトのエジプト人意識の形成過程を探る上で重要な資料となっている。 また、21世紀に入ってから近現代のコプトに関する研究が大きく進展していることを研究発表で指摘した。その背景には、欧米で教育を受けた移民2世のコプトの研究者が増えてきたこと、エジプトでコプトをめぐる状況が変化していること、そしてコプト正教会が研究活動に関してイニシアチブを取り始めていることなどが影響している可能性を指摘した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
『コプト共同体の歴史』という歴史書についての研究発表を行い、有益なフィードバックを受けた。論文にまとめて発表する作業は現在進行中で、順調である。 エジプトの歴史における「コプト期」の扱いについても、2019年度中に研究発表を行う予定であり、準備は順調である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、『コプト共同体の歴史』に関する論文を執筆するとともに、エジプト史における『コプト期』の扱いについても調査を進めて論文にまとめて発表する。 また、エジプトの国立大学におけるコプト語教育、コプト学研究については夏に調査を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
エジプトでの現地調査を行わなかったため、その分が次年度使用額となった。2019年度は夏にエジプトでの調査を行う予定であり、予算は計画通り使用できる見込みである。
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