研究課題/領域番号 |
17K13295
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
松村 智雄 法政大学, 人間環境学部, 講師 (30726675)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 増田コレクション / インドネシア国民議会議事録 / 華人 / 国籍 / 市民権 / 新報 / 生活報 |
研究実績の概要 |
早稲田大学アジア太平洋研究センター所蔵の文献(特にこれまで使用されてこなかった「増田コレクション」中の「1950年代インドネシア国民議会議事録」)を検討し、華人の国籍、市民権、兵役に関連する具体的議論の分析を行った。その結果を最終年度に学術論文として発行すべく準備を進めている。また、日本国内に読者が限定されないよう、英語で成果を発表する。 1950年代の華人の国籍状況に関して、インドネシアで1950年代に発行されていた『新報』紙(インドネシア語版)の解析を進めた。こちらも前述の成果を補強する内容として加える。 また、1950年代の華人社会を知る重要資料であるが、まだ断片的にしか利用されていない『生活報』(中国語紙)は、香港の出版社の知人からまとまった形で入手した。これを用いることで、1950年代の『新報』とは違った現状認識が把握できるはずであるが、まだ分析には踏み込んでいない。 研究計画にあるインタビュー調査については、インドネシア、ジャカルタでの調査協力者のサポートのもと、Myra Sidharta氏、Mona Lohanda氏、Benny Setiono氏については聞き取りが終わった。Dahana氏は現在インドネシア国外に在住のため、本人と連絡を取り、適切なインフォーマントとなりうる人を紹介してもらいインタビュー調査を進めている。 資料の分析により、1.1955年に中国側から表明された「華人の現地化を奨励する方針」に対しての違和感やオランダ植民地期の分割統治を背景とした華人への不信感が表明される一方、2.華人・非華人双方から、国内にステイタス不明の人々を多数抱えることへの疑問が表明されて、この問題の早期解決が望まれ、3.そのためにより厳格な基準で資格を審査し、特別な手続きを講じてインドネシア国民とする具体的な方策が決定された過程が明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成30年度は、家庭の事情によりやむを得ず海外渡航を行うことが予定通りにはできなかった。また、これまで得られた資料の分析は進めたが、論文を発表するには至っていない。 最終年度にはこの遅れを取り戻すために、夏季の現地調査に加えて、論文執筆に専念する。
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今後の研究の推進方策 |
特に本研究が焦点を当てるのは1955年のインドネシアと中国との間での華人の国籍状況をめぐる取決めの後、具体的に国籍法が定められる1958年までの間の政治的議論とその状況を反映した華人社会の動態である。 このテーマについて、政治的議論の方は、国民議会での具体的な議論についての資料を入手、分析することで、具体的に跡付けることが可能になった。この成果を学術論文として発表する。 もう一方の華人社会の反応については、これまで入手できた『新報』(インドネシア語)、『生活報』(中国語)の両方を総合的に検討し、さらに、当時の時代状況についてのインタビュー調査を踏まえて、多角的に分析することが可能になった。これを学術論文として発表する。 さらに、夏季にはジャカルタの金門島出身者にフォーカスした調査を行う予定である。その中でも1950-60年代に中国の出身地とインドネシアの間で揺れ動いた人々の足跡をケーススタディとして示すことが可能となるだろう。これについても論文を発表する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度に研究の推進に必要な文字史料を多く入手することができたため、平成30年度はその分析にあてた。家庭の事情により、平成30年度に予定していた海外渡航をやむを得ずキャンセルし、また、本課題とは別の研究課題遂行のため多忙であったため、平成30年度は本研究計画に基づいた海外出張が実現できなかった。このため次年度使用額が生じることになった。 この次年度使用額については、この研究計画が実を結ぶために必要な書籍の購入、資料収集、インタビュー調査目的の海外渡航費として、計画的に用いる予定である。
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