研究実績の概要 |
本研究は、女性の就労継続と管理職登用の課題を歴史的事例から明らかにすることを目的としている。特に、日本において専業主婦化が進行して以降も、一定数が出産後も継続就労する雇用慣行のあった教員職に着目し、「教職の女性化」を支えた世代への接近を試みた。具体的には、1960年代に地方都市から首都圏の小学校に入職し、出産後も継続就労してきた女性教員が管理職年齢到達後も、管理職ではなく、教員としてキャリア展開してきた過程に焦点を置いた。 もっとも重視したのは、高学歴女性の出産後の継続就労を捉えるにあたり、労働-生活の相互連関を捉える視点である。国内外の文献サーベイ、国際学会での最先端の議論への参加等を通じて、方法論を彫琢し、その成果は「女性労働をとりまく社会的分離の歴史分析――産休代替教員をめぐる日教組運動(1945~1975年)を事例として」(『社会学評論』69(3): 390-405, 2018年)や、"Does Japanese Women’s Labor Force Development Cause Gender Inequality?: Focusing on Maternity Leave Substitute Jobs in 1940’s-70’s", Comparative Sociology, 18(3): 327- 341として発表した。 本研究のもう一つの柱は、こうして吟味した方法論を用いて、1960年代に地方都市から首都圏の小学校に入職した女性教員の労働-生活史のインタビューデータを基礎に、上記の課題に実証的に迫ることにある。インタビューデータとともに、出身地域の資料収集を重ね、これをメインの実証データとして用いて分析を進めた。この成果を日本労働社会学会(2017年10月、2018年10月)、East Asian Social Policy research network 16th Annual conference (2019年7月) で報告し、海外の学術誌に投稿中である。
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