現在,我が国における観光地域づくり政策の中で,移動そのものや景観を楽しむためのドライブ・サイクリングルートの形成・発信が推進されている.このよう なロードツーリズムを広域化させ,より活性化させるには,地域景観の網羅的な把握と差別化,移動中に景観を堪能できるルート,効果的な情報提供などの検討 が必要である.検討項目は,「地域景観の網羅的分析と地域・国際比較」,「景観の連続性と選好性を考慮したルート探索手法の開発」,「これらを組み込んだ観光情報プラットフォームの構築」の3つである. 本年度では,主に「これらを組み込んだ観光情報プラットフォームの構築」について検討し,景観以外の多様な観光情報に関する分析を行い,プラットホームの素材となるデータベースを構築した.具体的には以下のような3つの研究を行った. ①「モバイル空間統計を用いた移動・滞在分析」では,携帯電話ユーザの位置情報が集計されたデータを用いて,北海道新幹線開業前後における函館エリアへの訪問客数を比較した.関東エリアまでの新幹線駅近隣の都市からの増加が顕著であることを示した.②「SNSデータを用いた観光地間の関心連結性分析」では,Twitter投稿データにある地域・拠点ワードを抽出し,北海道新幹線開業前後でそれらの連結性を比較し,ユーザーの関心先の広がりを明らかにした.③「AI型動画解析による自転車乗り心地計測」では,アクションカメラと自転車による低コストかつ簡易な道路撮影を行い,動画の「揺れ」から計測した振動量を基に不快度を推定する手法を開発した. これらの研究では,観光行動や道路状況などを広域かつ網羅的に把握できるIoT型の観測手法を提案し,結果をデジタルマップ化することで,GIS上ので可視化,空間解析が可能となる.したがって,本研究の成果は,人員や予算の制約に悩む地方自治体における観光情報データベースの構築に大きく貢献できる.
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