研究課題/領域番号 |
17K13307
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
森本 慶太 大阪大学, 文学研究科, 招へい研究員 (20712748)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ソーシャル・ツーリズム / スイス / ツーリズム / 観光学 / 科学的観光論 / 大衆化 / マス・ツーリズム / 観光政策 |
研究実績の概要 |
本年度は、これまでの成果を踏まえ、戦後西ヨーロッパ諸国におけるソーシャル・ツーリズムの展開に射程を広げた。本年度の終盤には史料収集に重点を置き、国内外での史料調査を実施した。 研究の出発点として、戦後、とりわけ1950年代の日本で西欧のソーシャル・ツーリズムの諸施策の調査研究が進められていた事実に注目し、どのような経緯で日本にソーシャル・ツーリズムの導入が図られたのか確認するため、同時代文献の検討を進めた。その際、行政や観光団体を通じて、ヨーロッパ経済協力機構(OEEC)ソーシャル・ツーリズム研究部会をはじめとする、ソーシャル・ツーリズムをめぐる西欧の動向について、積極的に情報収集が進められていたことを確認できた。日本側で特に注目されたのは、デンマークやスウェーデンといった北欧諸国の休暇制度などの諸施策だったが、本研究で注目するスイスや独仏の諸施策についても一定の紹介がなされていた。ソーシャル・ツーリズムをめぐっては、日本でも一時的に議論が活発化したものの、国民宿舎等の整備にとどまり、制度的充実が実現しなかった。その背景を探るためにも、西欧諸国の状況のさらなる検討が不可欠であることが改めて確認できた。 以上を踏まえ、西欧諸国のうち、とくに旅行団体によるソーシャル・ツーリズムを早期に確立したスイスの戦後の動向を検討した。とくに戦後のスイス観光学とソーシャル・ツーリズムとの関係に着目し、スイスの観光学界関係者が創刊した学術雑誌、Zeitschrift fuer Fremdenverkehr所収論稿の収集と、ソーシャル・ツーリズム団体の戦後の事業報告書をはじめとする史料を閲覧・検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度の前半は、職務多忙により海外渡航による史料調査や分析に時間を割くことができなかったため、日本側による西欧のソーシャル・ツーリズムに対する認識の検討に注力せざるを得ず、所期の成果を得るまでには至っていない。しかし、上記の作業を通じて、西欧のソーシャル・ツーリズムの歴史的意義を再考察することができ、研究の視点を位置づけなおすことにもつながった。また、本年度の終盤には史料調査を実施できたため、次年度につながる収穫を得られたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は新たに収集した資料も活用して戦後スイスのソーシャル・ツーリズムの動向を継続して検討し成果の発表をめざすと同時に、他のヨーロッパ諸国との比較史・関係史に着手する。当初はドイツ・オーストリア・フランスの諸施策の検討を想定していたが、1950-60年代の日本で北欧諸国の諸施策が重視されていたこと、OEECや国際ソーシャル・ツーリズム大会といった国際組織がソーシャル・ツーリズムを推進していたことなどから、スイスの活動を軸としつつ、より広範な国際協力関係を視野に入れて研究を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は、本年度の前半に職務多忙の状態が続いたこととの関連で、夏季休暇中に史料調査が実施できなかったことと、それを前提としたアルバイト雇用による史料整理作業を実施できなかったことによる。次年度には、複数回の史料調査と整理作業、それに新規の図書資料購入を見込んでおり、2019年度分の助成金と合わせて使用することを予定している。
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