研究課題/領域番号 |
17K13308
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研究機関 | 和歌山大学 |
研究代表者 |
Chakraborty Abhi 和歌山大学, 国際観光学研究センター, 講師 (70784776)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 人新世 / ランドスケープ変化 / 複合的システム / アルパイン・ツーリズム / 北アルプス |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、「人新世」と言われる地球規模の環境変化の時期における、日本列島の北アルプス地域でのアルパイン・ツーリズムの変遷の分析及びサステイナブル・ツーリズムの視点からその持続可能性の分析を提供することにある。また、本研究では、「ランドスケープ変化」というキーワードを通して、自然環境と人間社会の両方の変化と、これらの変化の相互関係を明瞭化しつつ、複合的システムの視点から山岳地域の現状と未来に関する知識の創生も目的としている。このため、北アルプス地域の地質的、地形的、生態系的特徴について整理しつつ、アルパイン・ツーリズム関係者の生活・意識において、それぞれの特徴と、環境・社会変化の影響について、調査を進めている。 上記に従い、平成29年度には、中部山岳国立公園の (i) 上高地ー穂高ー槍ヶ岳及びその周辺 (ii) 白馬岳及びその周辺 (iii) 立山黒部地域及び奥黒部山岳地域 で、現地調査(聞き取り、参与観察)を実施した。主にアルパイン・ツーリズムのサービス提供側である山小屋(合計12ヶ所)及び山岳ガイドに対して聞き取りを行った。さらに、北アルプスでの自然や社会変化の意義を、地球規模の自然変化時期において位置づけるために、国内及び海外の主な山岳地域における環境変化、社会的変化の特徴についての資料を収集し、分析を行った。また、国内外の研究者と連携を築き、北アルプス周辺の地方機関との情報交換や共同勉強会を進めた。 平成29年度の主な研究実績は、査読付学術論文 (2件)である。調査データや資料分析に関しては、平成29年の日本地球惑星連合大会、同年の日本地理学会秋季大会、Asian Studies Conference 学会において報告している。日本地理学会の秋季大会では、山岳地域の研究者を集めた研究集会も開催した。 今後、平成30年度の調査を踏まえ、学術論文(2件以上)及び、研究の総括を参考にした書籍の執筆の計画を進めていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究企画書や交付申請書に基づき、3つの調査地域では充実した聞き取りを行うことができた。特にアルパイン・ツーリズムのサービス提供側である山小屋や山岳ガイドの視点について当初計画していた以上にデータが集まり、その一部を、白馬岳地域に関した国際学術論文にまとめた。北アルプス地域におけるアルパイン・ツーリズムの全体的変化についてまとめた論文も別の学術雑誌に掲載された。 さらに、国内外の山岳地域研究者との連携を築くことができ、欧州アルプス、ヒマラヤ山脈及び、北米Rockies 山岳地域などに関した情報交換を進めてきた。 実践的アウトプットに関して言えば、奥黒部地域の山小屋を起点に、自然環境の持続可能性、科学的価値及び文化的価値に特化した新たなトレイル開設計画を進めている。平成29年度には、トレイル開設に必要な資料収集や地域関係者との情報交換を行った。平成30年度以降は、当事者と共同でトレイル開設に当たる調査を実施することを予定しており、本研究の成果の一部を現場の取り組みにおいても反映させるように計画を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は、3つの対象地域において聞き取り、参与観察を実施するほか、ツーリズムサービス提供側及び観光者に対するアンケート調査を実施する。 それぞれの対象地域からデータ収集後、対象地域ごとに分析を行い、その後、三角測量などの方法を用いて、3つの対象地域の状況の比較分析を行う。これらの分析結果と資料分析の結果を併せ、研究の総括を提供する。 平成30年度の主な調査目的は、対象地域における観光実態の参与観察、アンケート調査、及び一部の山小屋においての聞き取り調査である。また、分析における目標は、それぞれの地域のデータの整理、比較、総合的結論の展開、である。さらに、平成30年度には学術論文や学会発表を通して研究成果を発表することを予定している。 平成29年度から、国内外の山岳地域研究者との情報交換を行いながら、将来的に共同研究の可能性を模索している。今後本研究の成果を参考にしつつ、研究課題をさらに広く設定した国際的研究プロジェクトを検討しており、現在その計画を進めている。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度には、一部のデータ収集が当初計画した以上に進んだため、次の段階の調査を展開する前に、収集したデータの分析及び結果の論文化に力を注いだ。このため、当初の予算において差引額が生じているが、この差引額を平成30年度の現地調査にかかる費用として効率良く使用することにした。
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