研究課題/領域番号 |
17K13309
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研究機関 | 和歌山大学 |
研究代表者 |
佐野 楓 和歌山大学, 観光学部, 准教授 (60707298)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ツーリズム2.0 / ソーシャルメディア・マーケティング / 観光客 / 購買意思決定 / ソーシャルメディア |
研究実績の概要 |
今年度の研究目的は、主にツーリズム2.0の環境の下に形成された観光客の購買意思決定プロセスに関する統計モデルの構築であった。すなわち、主に消費者行動学の側面から、ツーリズム2.0時代の観光客の購買意思決定という心理的プロセスを分析し、従来の購買意思決定プロセスと比較した上、ソーシャルメディアが観光客に与える影響を明確にすることであった。 上記の研究目的を達成するためには、以下のステップで進めてきた。従来の消費者行動学分野で取り上げたニーズ認識、情報検索、代替品評価、購買決定、購買後という消費者購買意思決定プロセスについて、先行研究をレビューすることにより、各過程における重要な心理的変数(例えば、態度、知覚品質、知覚価値、ベネフィット、満足、e口コミなど)を絞り組んだ。また、確認した心理的変数が、ツーリズム2.0の環境の下で、ソーシャルメディアからいかなる影響を受け、いかに変化していくかについて、先行研究を整理することにより、1年目の理論的土台を築き上げた。更に、得られた理論的土台に基づき、観光客が、ツーリズム2.0の環境において、いかなる購買意思決定プロセスをするかについて、概念的フレームワークを構築し、従来の消費者購買意思決定プロセスと比較することによって、ソーシャルメディアから最も影響を受ける過程を特定し、観光客の購買意思決定に関する心理的プロセスに対する理解を深めた。 それに関して、平成29年度に主な学術論文は"Adopting recommedations from guidebooks and WOM Websites"及び "Exploring how travel blogs influence solo Chinese tourists to visit Japan"であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1年目の主な研究目的はツーリズム2.0の環境の下に形成された観光客の購買意思決定プロセスに関する統計的モデルの構築であった。本モデルの構築に関して、今年度においては、観光客の購買意思決定プロセスに影響を与える主な変数(態度、知覚品質、知覚価値、ベネフィット、顧客満足、事前知識、e口コミ、知覚リスク)を探索し、主要な変数である事前知識、e口コミと知覚リスクを明確にした。 それに関しては、「ツーリズム2.0時代におけるソーシャルメディア商業化に関する理論的探索」と「ツーリズム・マネジメントの最新動向と今後の展望」という学術論文で、上記の理論的探索の土台を築き上げた。 また、1年目においては、上記の研究目的に達成するためには、定性的手段(例:心理的変数を確認するための先行研究レビューとネットノグラッフィによる分析)、及び定量分析(例:購買意思決定プロセスの構築に関する因子分析、共分散構造分析)を組み合わせて行う予定であった。 それに関しては、上記2本の学術論文で築き上げた理論土台をベースにして、"Adopting recommedations from guidebooks and WOM Websites"及び "Exploring how travel blogs influence solo Chinese tourists to visit Japan"で、観光客の購買意思決定プロセスに影響を与える主要な変数を、定量分析によって確認した。ただし、予定していた研究対象を「TripAdvisor」から、中国最大級の口コミサイトである「Mafengwo」に変更した。その理由は、「TripAdvisor」より「Mafengwo」の方が、より多くの訪日中国人観光客に、有力な情報源として使われていることである。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度においては、研究目的の第2を達成するため、ソーシャルメディアの影響により形成された観光客の購買意思決定プロセスに基づき、観光客の購買意思決定に最も影響を与えるSMM戦略を探索するとともに、従来のマーケティング戦略と比較することによって、SMM戦略の競争優位性を明確にし、その効果を測定する指標の開発と評価基準の探索を行う。 前年度の研究成果に基づき、観光客がソーシャルメディアから最も影響を受ける心理的プロセスの段階に応じて、企業がいかなるSMM活動を行うべきかを明らかにするため、サービス産業生産性協会が開発した日本版顧客満足度指数(JCSI)のモデルを用いて、SMMに関するビジネス・モデルの構築を図る。次に、Sterne(2011)が提示したソーシャルメディアの効果測定100法に基づき、SMM戦略の有効性を測定する指標を開発する。更に、本ステップで開発した指標を構築したビジネス・モデルに導入し、観光業界におけるSMM戦略の従来のマーケティング戦略にはなかった競争優位性を見出す。なお、2年目の研究においては、海外の研究協力者との共同研究の形で研究を進めていく予定で、申請者が担当するのは、SMM戦略の有効性に関する測定項目の作成の部分である。 二年目の研究手法としては、主に定量的手段(因子分析と共分散構造分析)を用いるまた、TripAdvsior, Facebook, TwitterなどによってSMM戦略を行っている企業(例えば、全日本空輸、一休、H.I.S.など)と連携し、ネットノグラフィ分析によって、SMMの有効性を測定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
1年目の研究目的は理論的土台の構築であったため、文献の整理や、ウェブサイトにおける定性的分析は中心となった。上記の理由によって、次年度使用額が生じた。 また、生じた使用額である421,779円に関して、次年度で予定していたデータ分析と心理的モデルの構築に使用する。具体的には、1年目で築き上げた理論土台に基づいて、観光客の情報検索行動や、意思決定プロセスを、より明確にするためには、調査会社(株式会社・インテージ)に600サンプルのデータを購入する予定である。また、大阪観光局の協力を得て、関西国際空港で訪日外国人観光客に対して、インタビュー調査を実施し、それに伴って発生する人件費に使用する。
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