聖地など日常における宗教実践で形成されてきた空間の観光地化に伴い、入域料を徴収したり、ゾーニングを行ったりする手法で、空間管理が増加している。本研究は宗教空間の管理が既存の儀礼や信仰、民俗に与える影響を精査した。沖縄・長崎・新潟における事例を比較検討する中で、経済的な空間管理の導入は「世俗的」な管理組織の組織化を促し、過疎化により衰退する共同体に代わって聖地や宗教実践を担う主体になりつつあることが見て取れた。こうした世俗と宗教の交錯した新たな管理組織の体制は、精神性や宗教性を求める現代の観光客のニーズと重なり合うことが明らかとなった。
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