規範理論において、十分性説が持つ学術的意義は極めて大きい。第一に、十分性説は、優先性説と平等主義に対抗する有力な分配理論だからである。第二に、十分性説は、反平等主義的分配理論であるので、民主的平等論など分配を重視しない立場にとっても有意義だからである。しかし、十分性説の水準と根拠に関する包括的議論はなされておらず、こうした非分配的議論を含めた検討をおこなった点が本研究の意義である。 社会的意義としては、論文・学会報告・翻訳を通して、経済格差の重要な社会的課題に対する応答をおこなったという意義がある。
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