研究課題
若手研究(B)
神道の枢要徳である「正直」については、日本倫理思想史と神道学の両者の立場から相対立する有力な解釈が提示され、定説を見ていない。本研究は神道文献および儒教・仏教との影響関係の精査を通じて「正直」観念の内実の一端を明らかにした。考察の中心となったのは近世の国学者・賀茂真淵の「直き心」の議論である。さらに関連して、神道の哲学的特質や日本思想全般に共有された他者観念についても考察を行い、その成果を国際的に発信した。
日本倫理思想史
神道の主要概念であり、きわめて一般にも著名なものでありながら、その思想的内実が十分に検討されてこなかった「正直」について、神道文献の精査と、この概念の形成・展開に多大な影響を与えた仏教および儒教との関係の調査を踏まえて、他者に際会した際の非日常的な緊張感としてその内実を明らかにした。さらにここに現れた他者観念が前近代の日本思想史の顕著な特徴をなす仏・聖人といった特権的人格、あるいは経典への「信」へと思想史的に展開してゆく過程も併せて明らかにした。