今後の研究の推進方策 |
身体の動態性を支える「肉」の概念に焦点を絞り、「受肉」概念、及び「肉の自己触発」概念が、いかに言語において「意味」を担う概念として機能しているかを明らかにする。その際、『精神分析の系譜』(Genealogie de la psychanalyse, 1985)における「力」(force)や「アフェクト」の概念との連関を踏まえたうえで、肉の自己関係性が表現する言語論的構造の解明に注力する。また、アンリ死後公表された、『受肉』の準備草稿も分析対象とする(Notes preparatoires a Incarnation (2015))。この一連の考察は、山形賴洋によるアンリ身体論の分析(2004)の諸成果をたえず参照する。特に、ラントグレーベらのキネステーゼ論に関する山形の分析(『声と運動と他者』2004年)に対して、本研究は、言語論的観点から一層踏み込んだ分析を行う予定である。そのほか、A. Devarieux, "Force et affectivite chez Michel Henry"(2012)/J.-F. Lavigne, "Incarnation et historicite"(2013)を参照する予定である。なお、受肉をモデルとした伝統的言語論については、すでにアウグスティヌス言語論の詳細な研究(V. Giraud :2013)がある。こうした肉と意味との関連の考察は、申請者と同僚のV. Giraud 助教(同志社大学)との共同討議によって深められるはずである。その結果を研究に積極的に反映させ、一連の成果は、論文として『文化学年報』(同志社大学)において発表される予定である。なお、現象学的言語論の最新の知見を得るために、パリにも赴き、D. Franck パリ西大学名誉教授との討議を行う予定である。
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