本研究は、アンリの言語論を、後期のキリスト教三部作を通して分析し、その全体像を明らかにした。それと同時に、前期・中期の著作に言語論の原型となる発想を探った。アンリは内在を超越の本質と捉えることによって、命題で表現されうる言語の基礎として内在を提示する。内在と超越は「生の言葉」と「世界の言葉」という二元性として展開される。前者が後者の基礎たりうるのは、生が言語の素材となる内容を産出することで内在から超越への移行を可能にするからである。しかし、この移行は最終的に「生の言葉」自体ではなく、それを対象化する個々人の決定に委ねられることで「世界の言葉」の基礎づけは先送りされる。
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