研究課題/領域番号 |
17K13332
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研究機関 | 大正大学 |
研究代表者 |
石田 一裕 大正大学, 仏教学部, 非常勤講師 (20451031)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 西方諸師 / 大毘婆沙論 / 涅槃経 / ガンダーラ |
研究実績の概要 |
平成30年度は『大毘婆沙論』から取集した西方諸師説の読解、及び一覧表作成を実施した。合わせて収集した学説を含む一節を読解し、書き下しを作成した。またいくつかの学説については他の文献との比較検討を行った。特にその中の一例について、考察を加えた。 その一例は『大毘婆沙論』における『発智論』の引用について、西方諸師の異読が示される箇所である。その異読は、さらに、『発智論』が経典を引用している箇所となっている。この考察によって『発智論』について異読が存在したことが明らかになるとともに、同一の経典であっても西方諸師の保持していた経典と、『大毘婆沙論』が編纂されたカシミールにおいて保持されていた経典に相違がある可能性が明らかになった。これは同一の部派であっても、教団が存在した地域が異なれば、論や経という聖典において、異なる伝承がなされたことを示す具体例である。 当該箇所の考察については、現存する諸漢訳の涅槃経、チベット語訳『根本有部律』に含まれる当該箇所、梵文涅槃経との比較を行い、それらと有部の伝承との関係を調査した。いくつかの涅槃経については、『大毘婆沙論』及び『発智論』が引用する経文との類似が確認できた。結果として、従来の涅槃経と部派との関係を考察した研究を補完することとなった。 なおこの成果について平成30年9月に東洋大学で行われた印度学仏教学会で口頭発表を行い、『印度学仏教学研究』67-2に原稿を投稿した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
一覧表の作成については概ね当初の計画通りに作成が進んだ。 内容の把握については、西方諸師説の『大毘婆沙論』のなかでの位置づけや他の学説との関係を厳密に把握するために文献読解の範囲を当初予定よりも広げたために、遅れが生じている。また西方諸師の保持していた経論の引用については、十分な先行研究がなく、諸資料との照合に時間がかかったことも影響した。
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今後の研究の推進方策 |
収集した西方諸師説については、関連する文献との比較を通じて、内容を把握する。また考古学的な見地も踏まえながら、西方諸師説の特徴を明らかにしていく。 さらに近年議論が進む仏教研究の方法論や説一切有部研究の動向についても考慮しながら、本研究を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、資料の整理等を依頼しなかったため謝金の支払いが生じなかったこと、国内での調査を実施できなかったこと、資料読解に重点を置いたため研究書の購入が少なかったこと、という三点によって次年度使用額が生じた。 次年度は、国内におけるガンダーラ仏像の調査、最終年度における資料等の整備、また最新研究書の購入等を実施する。また専門を同じくする研究者からの助言を仰ぐなど、共同研究会を開催する。
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