研究課題/領域番号 |
17K13334
|
研究機関 | 大谷大学 |
研究代表者 |
渡邊 温子 大谷大学, 真宗総合研究所, 研究員 (20760052)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | チベット仏教 / 宗教歌 / ミラレーパ / カギュー派 / 甚深伝 |
研究実績の概要 |
チベットの詩聖ミラレーパ(1040-1123)の思想研究を行うにあたり、『甚深伝』の翻訳作業と校訂作業を行った。『甚深伝』は前半の伝記部分と後半の宗教歌の 二部で構成されているが、伝記の前半の翻訳研究は2017年度に大谷大学真宗総合研究所研究紀要で発表し、2018年度は後半の翻訳研究を同研究紀要で発表した。宗教歌の部分を引き続き翻訳しているが、意味を確定しにくい箇所が散見される。現時点では粗訳作成の段階だが、今後大谷大学名誉教授のツルティム・ケサン氏や校訂作業を依頼したチベット人学者のトゥプテン・ガワ氏と確認作業を行った上で、順次同研究紀要で発表予定である。校訂作業に関しては、昨年度に完了した、北京で出版された活字本のデータとニュアーク版写本及びオックスフォード版写本との校訂データの確認作業を行った。写本ごとの綴りなどの異同に関しては、すでにトゥプテン・ガワ氏の協力を得て、正しいと思われる読み方への校訂を行ったが、数が膨大であることに加え、内容を確定できない箇所が多いために確認作業は難航している。中国のチベット僧侶やインドのチベット研究者などと連絡を取り合ってはいるが、新しい『甚深伝』の写本の情報は得られなかったため、ニュアーク版写本とオックスフォード版写本との校訂本の出版を目指して確認作業を進めた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
翻訳作業において、『甚深伝』にみられる宗教歌がインドとチベットの仏教思想に根ざして書かれているため、内容を理解することが難しい。また、方言とみなれる表現も多くみられるため、翻訳が難航した。校訂データの確認作業に関しては、テキストの異同が膨大であるため作業の進捗が遅れている。
|
今後の研究の推進方策 |
『甚深伝』の翻訳作業を続けつつ、粗訳の出来上がっている箇所を、ツルティム・ケサン氏やトゥプテン・ガワ氏らと共同で確認作業を行う。対面で確認作業を行うことができない場合は、ネット上でやり取りを行う。その上で完成した翻訳研究を研究紀要に発表する。 また翻訳をもとにミラレーパの仏教思想を思索し、その宗教歌の特徴を他の研究者たちと議論し、日本チベット学会で発表する。校訂作業は異同が膨大な数になるため、引き続き確認作業を行い活字本での出版を目指す。それが叶わない場合は、当初の計画通り、ウェブ上で公開する。 新たな資料収集のために海外への渡航は考えていないが、中国やインドにいるチベット僧や研究者たちと引き続き連絡を取り合い、資料の情報収集をおこなう。なお、ニュアーク版写本とオックスフォード版写本に関して、印刷が不鮮明な箇所があるため、直接資料を閲覧する必要があるが、一旦保留とし、データの確認作業を完成させることを優先させる。
|
次年度使用額が生じた理由 |
資料収集のために海外へ渡航することが困難だったため、計画通り研究費を使用できなかった。今後チベット語ネイティブの研究者たちと共同で翻訳・確認作業を行う際の謝礼として支払う。また学会出張費、資料収集費に当てる。
|