2019年度4月から7月までは、8月のエルサレムでの研究調査の準備期間として、青年期ブーバーのハスィディズム受容、シャイ・アグノンの聖性理解、ゲルショム・ショーレムによるブーバーの聖性理解批判などを資料調査した。 2019年8月から9月まで、エルサレムに研究滞在した。エルサレムの国立図書館にて、アグノンの著作における聖性理解に関わる資料を取集し、調査した。これにより、アグノンが特に、ヘブライ語の聖性について言及が多いことが明らかになった。「アグノンの家」博物館を訪問し、研究部門責任者のRabbi Jeffrey Saks氏と会い、アグノン著作における聖性について意見を交換した。国立図書館では、ブーバーが若かりし頃に読んだ『ベシュトの遺言』の複数の版を調査した。通常広まっている版とブーバーが読んだ版のあいだに違いがあることを発見した。これにより、ブーバーによるテクストの誤読、またテクスト内容の意図的な変更ではなく、彼による逐語的な翻訳の結果だったとことが明らかになった。ヨナタン・メイール教授と会い、『ベシュトの遺言』の複数の版について、またブーバーの読解と翻訳について意見交換した。 2019年10月から10月に、本年度の研究成果をまとめ、日本ユダヤ学会2019年度学術大会にて「マルティン・ブーバーとゲルショム・ショーレムによる聖性についての論争――ハスィディズム理解を中心に」の題目で研究発表した。 2019年11月から2020年3月まで日本ユダヤ学会での研究発表をまとめ、学会誌に投稿した。 2020年3月に、ブーバーの聖性受容に関する公開講演会を企画したが、新型コロナウィルスが原因のため、これを2021年3月に延期した。
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