本研究は、歴史学者ラインハルト・コゼレックの歴史理論の展開を、彼の政治宗教的な全体主義理解に対する評価の変化との関係で検討するものである。 本研究から明らかとなったのは、次の二点である。(1)当初コゼレックは、全体主義のイデオロギーに含まれるユートピアニズムと歴史哲学を世俗化した終末論に由来するものと見なし、全体主義体制を政治化した宗教と同一視する考え方を評価していた。(2)しかし、彼は後になると、ユートピアニズムと歴史哲学の成立プロセスを、人間の経験様式に生じた変化に由来するものであると捉えることで、政治宗教的な全体主義理解を撤回した。
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