本研究は、被植民者からみた植民地統治と満洲経営を考察し、日本帝国主義の満洲経営と植民地統治の原理との連動/背反を明らかにするものである。成果は次の二点にある。(1)1920年代の米国排日法案に対する日本本土の言論と植民地台湾のそれとの温度差を検証し、排日法案は台湾人の「弱小民族」としての自意識の形成に拍車をかけ、アジア共同体の理想像に裨益する「日華親善の架け橋」という自己認識を強化する契機となったことを明らかにした。(2) 満洲事変に対する当時の台湾人の主張を考察し、日本の満洲占領に疑念を抱きつつ、新天地である満洲の開拓に赴くことをポジティブに捉えた植民地台湾の言論界を解明した。
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