令和元年度は最終年度として前年度までの研究をまとめあげるべく、ウジェーヌ ・ミンコフスキーの同調性概念について、現代の現象学、とりわけフェミニスト現象学との関連から分析を行い、論文を執筆した。当初フェミニスト現象学の視点から分析を加えることは研究計画になかったが、当該研究課題採択期間中に依頼を受け、当該研究についてより現代的に、かつ広く一般に公表するため、研究計画に加えた。 内容としては、前年度にミシェル・アンリ哲学会学会誌に投稿した論文「ウジェーヌ ・ミンコフスキーのtonalite──アンリ、ハイデガーを手がかりに」において分析した、同調性のもととなる調性概念について、現象学の発展形の一つとしてのフェミニスト現象学と関連づけ、論じた。この際、調性という分かり難い概念について、ミンコフスキー自身が論じる、匂い、雰囲気といった語、さらには外見という日常的な語によって説明することで、現象学と精神病理学の関連を指摘しながら、より広い読者層に開かれた研究結果報告となるよう留意した。 当該論文は、「外見を気にしてはいけないのか?──ボディ・イメージと雰囲気のフェミニスト現象学」として、ナカニシヤ出版より令和2年5月に刊行される、『フェミニスト現象学入門──経験から「普通」を問い直す』に所収される。
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