研究課題/領域番号 |
17K13346
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研究機関 | 東京藝術大学 |
研究代表者 |
鈴木 篤 東京藝術大学, 大学院美術研究科, 専門研究員 (90620873)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 図面 / 割矧ぎ / 内刳り |
研究実績の概要 |
令和2年度は、茨城県桜川市楽法寺金剛力士立像のうち吽形像(以下原本像)を模刻対象とし、3次元計測で得られた3Dデータから図面を作成し、構造再現を交えた縮尺模刻の実施を試みた。 その制作工程の初期段階として、前年度確保したヒノキ材原木の丸太から彫り出すことのできる縮尺寸法を3Dデータから算出し、2分の1スケールの「図面」を作成した。これを用いて本研究では2分の1縮尺模刻制作を進めることとした。なお「図面」を用いる根拠としては、3次元計測調査による先行研究で指摘されてきたように、当該期には、彫刻の設計図、いわゆる「図面」を用いていたであろうという説をもとにしている。 次の制作工程として「打割り製材」を行った。これは用材であるヒノキの原木に楔を打ち込み、木目に沿って割り放す製材方法で、原本像が制作された鎌倉時代に行われていたとみられる製材方法である。 さらに本研究では、近年の先行研究などを参考に、前述の図面をもとに背面・側面の木型を作成した。そして背面と右側面で直交する2平面の製材面を作った半割材に近い状態の木材にあてがい、打割り製材直後の当日に原本像の構造である割矧ぎと内刳りを施した。このように木型をあてがうことで、図面転写のために角材へ製材しなくても割矧ぎの位置や内刳りの深さを定めることが可能となった。従来「割矧ぎ」は、木彫像の彫刻作業を粗彫り程度まで進めた後に木彫像頭体幹部などを割り放す技法と考えられてきた。しかし本像の構造上、このような手順では再現が難しい箇所が多く見られた。そのほか原本像には、粗彫り後に内刳りを施すような従来の制作工程では起きにくい干割れが発生していた。 よって本研究では、原本像は彫刻が進む前の製材直後の丸太に近い状態で割矧ぎと内刳りを施したのではないかと仮説を立て前述のような工程で行った。すると模刻像の粗取り状態において、原本像と類似した干割れが観察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2020年度が最終年度であったため、当初は模刻像を完成させる計画であったが、新型コロナ等による緊急事態宣言などの影響が大きく、研究計画が著しく滞った。そのため、前述の図面制作・製材・内刳り・粗取りまでの工程と、ごく一部の参考調査を実施する程度にとどまった。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度における本研究再延長の申請が承認されたため、本研究での縮尺模刻制作で残された制作工程を進める予定である。具体的には、粗彫り・中彫り・小造り・仕上げなどの彫刻作業を実施する計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
前述のとおり緊急事態宣言等で研究計画が著しく滞ったため謝金等が2021年度に繰り越された。当該予算は、楽法寺金剛力士像のうち吽形像縮尺模刻制作の粗彫り・中彫り・小造り・仕上げ作業等の費用に充当予定である。
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