本研究は、植民地朝鮮(1910~1945)における日本人社会の音楽文化受容の一側面について『京城日報』音楽 関連記事・広告と、京城放送局の音楽プログラムを手掛かりに明らかにするものである。 当時、在朝鮮日本人社会ではどのような音楽が、どのような方法で伝わり、どのような音楽が好まれていたのか、また、その音楽は彼らにとってどのようなものであったのかについて当時のメディア情報を分析し、音楽文 化受容過程の一部を解明した。 研究機関全体を通して最も大きな成果と言えるのは『『京城日報』音楽関連記事・広告目録集』の出版である。これは在朝鮮日本人における音楽関連メディア情報として日韓近代音楽史を研究する上で一つの基盤となるものであることから、価値が高いと思われる。二つめの成果としては、京城放送局(JODK)の音楽関連プログラムを網羅しデータ作業がかなり進んだことである。できれば、今年度中にそのデータ作業を完了し、同じく『京城放送局音楽関連プログラム目録集』として出版できるようにしたい。 これらのメディア情報関連資料を手掛かりに「在朝鮮日本人」の音楽文化受容の実態について研究期間中に行った実績としては、計8編の論文と、2冊の図書出版、15回の学会発表を行った。さらに、朝鮮の西洋音楽と在朝鮮日本人に関する単著と、朝鮮の国民音楽・厚生音楽に関する1冊の共著の図書が2021年6月頃に出版を予定している。 以上、これらの成果を通じて植民地朝鮮における在朝鮮日本人の音楽文化の受容実態が一部明らかになり、特に日本伝統芸能(歌舞伎、文楽、琵琶、尺八など)が高い受容があった実態を究明した。これらの研究は、2021年度に採択された「植民大都市「京城」の音楽文化研究:土着者・植民者文化の交差に着目して」(若手(B)、21K12865)において発展させたい。
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