研究課題/領域番号 |
17K13356
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研究機関 | 尾道市立大学 |
研究代表者 |
西嶋 亜美 尾道市立大学, 芸術文化学部, 准教授 (50713781)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | フランス近代美術史 / ドラクロワ / 美術批評 / 宗教画 |
研究実績の概要 |
本研究は、19世紀フランスの画家ウジェーヌ・ドラクロワの作品中、同じテーマや同構図を繰り返し制作する「反復」の全容と意義を、制作過程と受容の両面から解き明かすことを目指すものである。 2019年10月より産休・育休を取得し、2020年度は本研究課題については中断し、研究費を執行していない。 ただし、事例研究として2019年に開始していたドラクロワの宗教画における「反復」に関連して、育児の合間にボストン美術館蔵《墓のキリスト》の研究を進め、2020年12月に日仏美術学会例会において研究発表の機会を得た。この調査の過程で、宗教画関連の批評を優先的に収集・検討したところ、19世紀中盤のフランスのサロンでは、主題のヴァリエーションに乏しい宗教主題作品全般が、一種の「反復」として捉えられていることが確認された。この成果も手掛かりとしつつ、引き続き批評の収集を続け、受容面で「反復」の評価や位置づけを検討したいと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予期せぬ病気休暇からそのまま研究中断に入った2019年度末の段階では、研究計画からの遅れが生じていた。2020年度は育休取得のため、一年間研究を中断したが、オンライン化された資料などをもとに細かい調査を進め、ドラクロワの宗教画で研究発表を行うことができた。これにより、前年度の遅れを取り戻しており、2021年度の研究再開後は、発表の議論をもとに宗教画の研究を進捗させうると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
まずは、ドラクロワ《墓のキリスト》(ボストン美術館)の研究発表をもとに、ドラクロワによる宗教画の論文をまとめて投稿する。あわせて、同作品研究において重要な役割を果たす、ドラクロワの「プッサン論」に関して、より厳密な議論を行うとともに国内のフランス美術研究に資するために翻訳し、例えばwebから制限なく参照できる『尾道市立大学芸術文化学部紀要』などで発表する。そのうえで、宗教画に続いて、オリエント主題の作品の「反復」に関して、基礎研究と資料収集に着手する。 また、受容研究に関しては、2021年度から2022年度の課題として批評の収集を続け、複数の画家が同主題の作品を展示したサロンなどの展示機会や、過去の作品を比較対象として作品分析を行っている批評などに注目しながら、批評における「反復」の評価や位置づけを検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究実績の項で記したように、育休の取得に伴って研究を中断し、研究費を執行しなかったため、次年度使用額が生じている。未使用分は、2021年度以降、国内外での調査や資料収集の費用、また、計画の遅れを取り戻すための資料整理アルバイト謝金として使用する予定である。
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