研究課題/領域番号 |
17K13360
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研究機関 | 独立行政法人国立文化財機構東京国立博物館 |
研究代表者 |
植松 瑞希 独立行政法人国立文化財機構東京国立博物館, 学芸企画部, 研究員 (70610335)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 中国絵画 / 蘇州版画 / 明 / 清 / 旅行 |
研究実績の概要 |
本研究は、16・17世紀の中国江南地域における旅行絵画の作例である、陸治筆「白岳紀遊図冊」(藤井斉成会有鄰館蔵)、文伯仁筆「四万山水図」(東京国立博物館蔵)、張宏筆「越中真景図冊」(大和文華館蔵)について、①画家・作品様式の美術史的位置付け、②描かれた実際の景観に対する文学的イメージとの比較、③旅行先の実際の景観との比較を行うものである。 当該年度は、蘇州から杭州、徽州一帯の名勝、およびこの地域の旅の記録を中心に、16・17世紀の地方志・旅行文学に関する文献の読解を行った。 また、旅行絵画を理解する上で上記3点と並んで重要な作品である、銭穀・侯懋功・文嘉筆 「洞天福地図巻」(東京国立博物館蔵)、および関連作品の題跋分析を行った。「洞天福地図巻」は、文伯仁とほぼ同時期に、同じく蘇州という大都市で活躍した画家たちによる合作の画巻であるが、これが旅行文化と関わっていることは十分に考察されてこなかった。今回、題跋を精読してこれが沈居士という人物の旅行を記念する作品であり、上記3点の作品と主題上、深く関わっていることを明らかにした。 さらに、16・17世紀以来の人気の旅行先である名勝を絵画化した蘇州版画や、そのほか関連する作品の国内調査を行った。18世紀に最盛期を迎えた蘇州版画は、その主な制作地である蘇州の文化的関心を色濃く反映している。16.17世紀の旅行絵画が後世どのように発展していったかを知る上で重要な資料といえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
国内における作品調査や文献資料の読解は進めることができたが、子供の養育に伴う家庭の事情のため、長期の出張を必要とする海外における作品調査を計画どおり行うことができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
当該年度実施予定であった作業を次年度以降に振り分け、引き続き、文献史料精読と作品調査を行う。 令和元年度は、陸治筆「白岳紀遊図冊」(藤井斉成会有鄰館蔵)、文伯仁筆「四万山水図」(東京国立博物館蔵)、張宏筆「越中真景図冊」(大和文華館蔵)それぞれの画家の個人様式を理解し、画業全体における当該作品の意義を考察するため、台北故宮博物院、上海博物館所蔵作品の調査を行う。 令和2年度は、欧米美術館所蔵作品調査を行う。また、陸治筆「白岳紀遊図冊」と張宏筆「越中真景図冊」に描かれた旅行先の実地踏査を行い、実際の景観と絵画表現との関係について考察する。成果発表も積極的に行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた海外における作品調査を実施することができなかったため。当該調査は次年度に行う。
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