研究課題/領域番号 |
17K13362
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研究機関 | 公益財団法人大阪市博物館協会(大阪文化財研究所、大阪歴史博物館、大阪市立美術館、大阪市立東洋陶磁美術 |
研究代表者 |
森橋 なつみ 公益財団法人大阪市博物館協会(大阪文化財研究所、大阪歴史博物館、大阪市立美術館、大阪市立東洋陶磁美術, 大阪市立美術館, 学芸員 (20795281)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 美術史 / 中国絵画 / 遺民 |
研究実績の概要 |
平成29年度は資料収集のための調査を中心におこなった。国内、および中国(北京・天津・上海・蘇州・南京)・台湾での作品調査では、特に清初に活躍した明遺民の作例を数多く実見することができた。また、当初2年目以降に予定していたアメリカでの調査が調整の末、本年度の実施となった。ボストン美術館、クリーヴランド美術館、メトロポリタン美術館の3館を訪問し、宋遺民に関わる宋元時代の作例を中心に調査・撮影することができた。これらの調査を通して図版では確認できない図像・文字資料の収集ができ、また作品の時代観についても実見の中でおおよそつかむことができた。集積した資料については2年目以降の比較研究などで活用し、さらに検討していく。 調査のほか、本研究で中心的に扱う宋遺民の絵画2点、すなわちキョウ(龍+共)開の「駿骨図」と鄭思肖の「墨蘭図」(いずれも大阪市立美術館蔵)について、題跋など付属の文字資料を釈読し、整理した。この作業を通して、作者の意図したところの作品の表象と遺民観の関係、および鑑賞者が重ねていった遺民イメージなど興味深い内容が読み取れた。なお、「駿骨図」では、これまで不明とされていた印章の用印者が判明し、作品の伝来について資料を加えることができた。また、墨蘭図も不明であった印文の判読ができたため、今後さらなる検討を加え用印者の特定につなげたい。この釈読した内容については『関西九館 中国書画録Ⅲ』(関西中国書画コレクション研究会、2018年3月)において公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度は予期せず海外調査が多くなったが、全体を通して計画していた内容であったので、実施年度を調整することで、研究課題の遂行には特に問題ないと考えている。本研究の中心に据えている宋遺民画の2点について、題跋や鑑蔵印など文字資料の内容について一通り見渡すことができたのは本年度の大きな成果であった。この成果を次年度以降の基礎資料として活用していく。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は引き続き資料収集を進めていくとともに、初年度に集めた資料を整理・比較検討していく。平成30年度は本研究で対象としている作品を含んだ中国書画展を企画しており、併せて国際シンポジウムを開催する予定であるので、研究課題のここまでの成果を反映できるように努め、さらに発展させる機会としたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度は予定よりも早く調査研究の機会が叶ったため、調査旅費の支出を優先し、図書・備品類は購入を控えた。そのため、図書・物品購入費として若干の額を残し、翌年度予算と合わせて初年度に見送った調査・研究環境の整備に充てたいと考えている。なお、平成30年度の研究計画の遂行に十分な調査旅費は確保したい。
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